欲情、春の画より 本を、片付けていた。
棚の上に重ねられた山が、少し崩れてしまいそうに思ったのだ。
いつもは勝手には触らない、彼の大切な本だ。
気を付けて扱わねばと、なるべく丁寧な手つきを心がけた。
ふぁさり、
――と紙が一片、折り畳まれた状態で、床の上に動きを止めた。
私は膝を折って紙を拾った。
好奇心からあまり考えもせず、その裏まで墨の滲んだ紙を広げた。
「あ」
春画であった。まずいと思った。
その紙の上には、裸の女と男が床に傾れ込んで絡み合っている。
見てしまったと、ぱたりと紙を折りたたみ、次第にいくつかの思考が浮かんでくる。
これは、彼の知らない部分を勝手に見てしまったような、罪悪感だ。
彼もこういうものを見るのが好きなのだろうか。いや、勘兵衛とて男なのだから然るべきこと。むしろ今まで、なぜ彼は見ないだなんて思っていたのだろうか。
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