ハッサク先生の目が苦手なアオキさん彼の瞳が苦手だった。
アオキは同僚であるハッサクと目を合わせることはない。それをハッサクが不満に思っていることもアオキは承知していたが、その態度を変える気は更々なかった。
生まれからして他とは違う、成功が約束された男。冴えない自分とはまるで違う爛々と輝く橙は、彼の精悍な顔によく収まっていた。
「アオキ!聞いているのですか」
「……はい」
今もこうやって、彼の橙が自分の頬に突き刺さる。あまり見ないでほしい。喉の奥で何かがつっかえたような息苦しさをアオキは感じていた。
ハッサクが怒っているのは、おそらくチリを介して業務連絡をした件だろう。たしかに直接自分が連絡をしなかったのは悪いと思うが、別件ですぐ外に出なければならなかったし、リマインドのメールだって送付したはずだ。その程度のことで長々と説教を食らうのかと思うと、陰鬱な気分になる。アオキはため息を噛み殺しながら、会議室の床を眺めていた。
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