愛しの黒髪のあの子俺の名前は村田。都内にあるみなもスポーツというスポーツ用品のメーカーで営業をしている。今日は大口の契約が取れた。地道な営業活動が実を結んで嬉しい。鱗滝社長にもお褒めの言葉をいただいた。外はあいにくの雨だが、俺の心は晴れやかだ。
お祝いにビールでも飲んで帰ろうかと考えながら歩いていると、どこからか弱々しい犬の鳴き声が聞こえてきた。
周りを見回してみたが犬の姿はどこにもない。気のせいかと歩きだそうとすると、また鳴き声が。声を辿ると、狭い路地から聞こえてきた。人が一人やっと通れるくらいの狭い路地。俺は傘を半分閉じながら中へ入っていく。
すると、小さなダンボールが置いてあった。中を覗くと黒い小さな犬が雨に濡れ震えていた。
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