いつかは愛をささやいて 月夜のこと。
とある本丸は、一度に沢山の仲間を迎えた祝宴で、ひときわ盛り上がっていた。
歓迎される側の一振である鶴丸国永は、ささやかながらも賑やかな宴を十分に楽しんでいたが、ふと、この本丸に先だって顕現していた一振の姿が見えなくなっていることに気付く。その姿を探して広間を出ると、目の前に季節の花が咲く庭が広がる。星々のきらめく夜空には、流れる雲の衣を着た月が、世界を優しく照らしていた。
「ははぁ、こりゃいいもんだな」
口にして、その景色を眺めながら庭沿いの廊下を歩く。そして、その先にある一つの影に声を掛けた。
「宴を抜けて、一人で月見酒かい?」
そこには、床に胡座をかいて座り、盃を傾ける三日月宗近の姿があった。
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