アディショナルタイム 辺りは闇。
「遅い」
「これでも、飛ばして来たんだけど」
カルエゴ邸に息を切らしたシチロウが飛び込んできたのは、夜も更けた正子を過ぎた刻のことである。
「予定では昨日だったはずだが」
「ごめん、急ぎの件が入っちゃって」
「連絡も寄越せない程急ぎだったようだな」
まずい。予想以上に怒っている。
カルエゴの深夜らしい静かな口調は、台詞以上の怒気を孕んでいることにシチロウは気づいていた。
「本当にごめんなさい…」
「お前が主役の日は終わった。だから今日は俺の好きにさせてもらう」
「どこ行くの?」
「寝るんだ馬鹿、何時だと思ってる」
日付が変わった今、お前は用済みだとでも言われた気がしてシチロウはしょんもりと耳を垂れた。
昨日はバラム・シチロウの誕生日であった。
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