ワインレッドの陥落■ワインレッドの陥落
故郷のハロウィンは「まんだかな」という行事と同義である。
子どもたちがお菓子をもらいに集落を回るこの行事はハロウィンが定着する前からあったので、時代を先取りしていたとも言えなくもない。
「まんだかな!」
元気な声と共に玄関がガラリと開き、栗色の髪の毛をした子どもが飛び込んできた。
子どもはオレの顔を見るなり、驚いたように大きな瞳を更に丸くさせた。
「ヒロ兄!!」
どん、と勢いよく胸元に飛び込んで来た子どもの頭を撫でる。久々に感じる温度に帰って来たのだと思う。
「ただいま、なる」
ぽすぽすと胸元にある頭を撫でると、なるは嬉しそうに笑った。
「おかえりヒロ兄!!」
えへへとなるは笑うと、くるりと後ろを振り返った。
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