花降る夜明けのモラトリアム[1] 目の前がパチパチと瞬く。それはまさに閃光だった。
電光石火と噂されたのも頷ける。深い緑色をした石が太陽の光を反射して視界が弾けた。きゅうっと窄んだ虹彩の隙間から入り込んできたその閃光は縦横無尽に脳内を駆けて、海馬やら前頭葉やら大事な器官のあちらこちらをじくじくと焦がしていった。
雷鳴のようなこの衝撃と衝動は何なのか、答えは持ち合わせていなかった。汗と呼吸と夏の空気で僅かに湿った体育館で、心臓の裏に仕舞われていた導火線の先にボッと火が灯るほど熱い出会い。少なくとも流川はそういう認識をしている。これまで色んな怪我をしてきたが、こんな内側を焼く痛みは初めてだった。ヒリつくのにそれでいてじんわりと染み込んでいくような、近くに居て落ち着くような声と体温を持っている人間は初めてで。また明日会えることが嬉しいと思える珍しい人だった。
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