カレイドスコープ 穏やかな人柄の滲む面差しに、初めて口付けを交わした時のぎこちなさ。同性相手は未経験だと期待しなかったかと言えば嘘になる。
壁に背を預けたルッツは眼下の光景をはっきりと視界に捉えながら、果たしてこれは夢か現のどちらだろうと首を捻った。強い力で自身を壁際へ追いやった赤銅色の恋人。唇を重ね鋭い眼差しで一瞥したかと思えば、膝を着いて慣れた手付きでルッツのスラックスからベルトを抜き去る。そのまま流れるようにフロントホックを外し、ファスナーを咥えてゆっくり引き下ろした。
「ッ、ワーレン……」
寛げた前立てから覗く下着へ寄せられる顔。布地の下で少しずつ熱を持ち始めたものを、ワーレンは唇で柔らかく食んだ。下着越しにかかる湿っぽい吐息に思わず喉の奥から声が漏れる。
607