それぞれの残響 誰かのために生きるより、自分のために生きたい。
いつかの朝、マチュはそう言った。その姿はただただ、美しかった。
終わりのない旅を続けて、私たちはいつまでも同じ袋小路にいる。
なのに、私はずいぶんと幸せだった。
「ニャアン、もう一歩後ろ。……ちゃんと隠れてて」
そういったマチュが窓際で引き金を引くのを、私は突っ立たまま見ている。ぱしゅん、とサイレンサー付きの拳銃は弾丸を打ち出して、眼下で昼食をとっていた目標に命中する。どうっと大きな男の体が倒れこむ音。地面に流れ出す赤い血。叫び声。闇市の人混みの中をいくつもの感情が駆け抜けていって、気持ち悪い、と胸の底がざわついた。ぎゅっと奥歯を強くかみしめて、影の中の体を両手で抱きしめて、じっと身をひそめる。
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