これも全部、必要なことパチン、パチン、パチン――――。
静かな部屋の中で爪を切る音だけが響く。ベッドの端に座った荼毘の向かいに座ったコンプレスはつぎはぎの手を取って、丁寧に爪を切っていく。
少し伸びた爪を爪切りで切って、やすりで整える。
そんなに丁寧にしなくても邪魔にならなければ何でもいいのにと思いながらも、荼毘は大人しくしている。
ガタつく爪をやすりで削って、引っかからないように指に沿ったカーブを作る。片方の指を仕上げて満足そうにしたコンプレスは「はい、反対の手出して」とまるでお手をしてもらうかのように荼毘の手を待った。
荼毘はベッドの上に置いていた手をコンプレスの前に出す。
「……楽しいか?」
反対側も同じように伸びた爪が切られていく。機嫌が良さそうな顔をしてるコンプレスに荼毘は眉をしかめながら聞いた。
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