失恋した女と呑むogt「ねぇ今日夜空いてる?」
二つ返事で誘われるままに着いていけば小汚い居酒屋に案内された。眉を顰めたのに気がついたのか
「味はいいんだよ?」
そうか。
「まぁお前の舌は確かか」
舌“だけは”な。
対面に座った女が一気に酒を煽り、ジョッキを勢いよくテーブルに叩きつける。
「あれは私のこと好きな感じだったじゃん!」
どうやら好いた男に振られたらしい。
心の中の笑みが溢れないよう、目線を酒に向ける。
「そうか」
「なんでそんなに冷たいの⁉︎傷心の乙女なのに!」
「別に」
女の顔を肴に一口、酒に口をつける。
別に。特段驚くことでもないだろうが。
あんな男の何がよかったんだか。平凡な顔、平凡な家。平々凡々の具現のような男。営業成績だって俺に及ばないどころかこいつよりも下だった。よかったのは女の趣味だけか。それもクソだが。
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