学パロ臥英①空高く、宙に浮かんだしなやかな体に、臥信は初めて「美しい」という感想を抱いた。
強かに咲き誇る花も、どこまでも澄み渡る空も、静かにたたずむ月も、今まで見たどんなものよりもそれには及ばない。
そんなに高く跳んだら、神の怒りをかって撃ち落されるのじゃないだろうか。柄にもなくそんなことを思った次の瞬間、彼の体は吸い込まれるように地面に向かい、そして緑色のマットに沈んだ。
受け身を取った体は勢いに任せて綺麗に一回転し、無駄のない筋肉をまとわせた脚を地面に着地させる。乱れた黒髪を白く細い指がかき上げた、瞬間。
彼と目が合った。
交わった視線はすぐに外され、彼は臥信に背を向けて走り出した。
高1の春。仮入部期間を終えて部活動が本格始動した頃。まだ夏には早いが桜などとっくに散り終えたグラウンドで、臥信は呆然と立ち尽くしていた。
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