身体が動かない。ただぐったりと脱力し、冷たく硬い塩倉の床に横たわっている。頭の先には、先程までわたしを無数の毛針で刺し貫いていた化け物男が座り込んでいる。何をしているのかはわからない。もはやそれを考える気力も残っていない。
全身に開いた穴からとめどなく血が流れだし、体温とわたしの生命力を奪っていく。この世に留まっていられる時間も、そう長くはない。薄れつつある意識の中で、その事実をどこか冷静に受け止めていた。
「……どの」
「おお、……か、いつ……」
何者かが塩倉に入ってきたようだ。おそらく一人ではない。伊賀者だろうか。化け物男と何やら言葉を交わしているようだったが、聞き取ることはできない。男が立ち上がって戸口に向かう気配を感じる。それと入れ替わりに、今ここへやってきた何者かがわたしの傍らに腰を下ろした。
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