あまなす / 雨茄子
できたずいぶん寒い日だった。おまけに風も強かった。
あの日、最後のメッセージを送ったあと、既読がつかない。
下ばかり見ていた。
よく人とぶつかった。
久々、空を見上げたら、あのときと同じ雲が流れていた。
季節が何度めぐっても、私の時間は止まったまま…
#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた空気が狂う。風が怖いくらいに乱れ、いったい何をそんなに、と文句を飛ばす。カラカラカラ、空き缶が転がり、まだ葉のつかない枝は窓をたたく。買いものに行けば、たちまち風の餌食。今日は、あるものだけでスウプでも。せめて、心のなかだけは、あたたかく。#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できたまだ残る湯たんぽの微かなぬくもり。おふとんの無数のしわ。ラジオのやさしくも軽快な声。後ろからつつんでくれる洗濯ものの匂い。寒い冬の朝、空気は青く澄み、遠くからの音までも届く。きつい硬質の冷たさに心は病み、沈んでいく。それが、どこか落ち着く。#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できたカーテン越し風が透ける。すばやく回り込み、私の足元を駆ける。寒い。言葉が頭を打つ。ストーブが消えている。過去の私がしたことを、いまは、風のせいにしてしまおう。ズルい私を非難するように、風は部屋のなかをかけ回る。ごめん。謝っても、もう手遅れ。#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた米の価格が腹に響く。悩ましい毎日に救いはない。せめて、腹いっぱい食べたいと、大麦に救いを。さつまいもにも協力を願う。
かさましした米から甘い湯気が立ち上る。残りものの豚汁、つくり置きのほうれん草のごま和え。
役者はそろった。
さて、食べるか。
#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた「いまこの瞬間、何か浮かんでこない?」「え、わかんない」
ボクののんきな返答に、キミはあきれ、そっぽを向いてしまう
コンビニで買ったあたたかい缶入りミルクティーを握りしめ、冷たい風をしのぐ朝
キミの真っ赤なかわいい頬に、ボクは見惚れていたんだ
#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた買いものかごにある半額のお惣菜の残り香と前に並ぶ買いものかごのレモンの香りがまざりあうレジ待ちで
人の生活のあれこれが私の鼻先で優雅に遊ぶ
そのひとときの淡いぼんやりが
心の和らぎへと変化していく
ささやかなこのしあわせが
破られないことを願う
#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた隣の部屋の笑い声。つられて笑う土曜の夜。同じテレビ番組をみてるらしい。だから、つられたわけでは…真実がわかり、急に潮が引くみたいに興味が失せる。つられて笑っていた方がよかったか。
テレビを消す。
ふふ。隣の部屋から笑い声。
ふふ。完璧な孤独。
#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた仕事から帰ってポストを覗く。指先に伝わる感触だけでチラシだと察し、無視して部屋へと足をくり出す。足の重みは心の重み。チラシの軽さは世間の軽さ。考えすぎだろう。わかっているけど、考えてしまう。止める方法があれしかないことだって、僕は知ってる。#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた用心して跳ねるしかないのさ。神から託された残機はひとつ。リセットボタンのない毎日が、妙にゆるゆるふわふわで、なぜか難易度超激ムズ。社会というある意味での魔界を生きていかないとならない。このクソゲーな日々を、今日も、慎重かつ大胆にプレイする。#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できたいじわるなのかな。ウチのトースター、片側だけやけにコゲる。それをジャムで隠して食べる朝の短くも優雅なひととき。
グレープフルーツのそれとも、胃腸薬のそれとも、仕事で味わうそれらとも違い
そのコゲの苦み、言うほど悪くない。
いつもサンキュー!!
#140字小説
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あまなす / 雨茄子
できた気がのらなかった集まりに、あえて行き、想像していた通りの結果に。けれど後悔、なんて、思われたくない。かといって無理に笑顔を見せても、歪んだ笑顔はバレている。黙って帰ればいい。それができたらとっくに。帰ってしまったって、誰も咎めはしないのに…#140字小説
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