2kisakiii
DONE5話のあと風が吹いた日「ほんま、いい加減にせぇよ」
「……」
風のない、静かな夜だ。
今日の火の番は最初がヴァッシュで、次がウルフウッドという取り決めだった。月が天頂から45度傾いたら交代という暗黙の了解があったのだが、ウルフウッドが目を覚ました時、月はだいぶ先の方まで傾いていた。起こすために話しかけるより、寝ずの番をした方がましってことか、と、内心で舌打ちをする。そうやって出て行った先では、赤いコートの男が酷く傷ついた顔をして座っていた。それが、ウルフウッドの気持ちを逆撫でした。
「いつまでぶすくれとんねん。おどれがそうやって黙っとるから、ねーちゃんもおっさん――は知らんけど、とにかく揃いも揃って辛気臭い顔してかなわん。車内の空気が最悪や」
1147「……」
風のない、静かな夜だ。
今日の火の番は最初がヴァッシュで、次がウルフウッドという取り決めだった。月が天頂から45度傾いたら交代という暗黙の了解があったのだが、ウルフウッドが目を覚ました時、月はだいぶ先の方まで傾いていた。起こすために話しかけるより、寝ずの番をした方がましってことか、と、内心で舌打ちをする。そうやって出て行った先では、赤いコートの男が酷く傷ついた顔をして座っていた。それが、ウルフウッドの気持ちを逆撫でした。
「いつまでぶすくれとんねん。おどれがそうやって黙っとるから、ねーちゃんもおっさん――は知らんけど、とにかく揃いも揃って辛気臭い顔してかなわん。車内の空気が最悪や」
2kisakiii
DOODLE名前はまだない 目を見たら分かる、と言われた。その時の柔らかい声音が、先ほどからウルフウッドの思考の中をふわふわと漂っていた。
目の前の焚き火がパチパチと小気味よい音を立ててはぜている。ちらりと横を見れば、赤いコートの男が薪をくべている所だった。焚き火に照らされたその顔を盗み見る。薄いオレンジのサングラスの下、焚き火を映した瞳がちらちらと光っていた。
瞳の色は青だろうか、とウルフウッドは思い、いや緑か、と思い直す。どちらともつかない色だった。暗がりではよく分からない。焚き火に合わせて揺れるそれは、たっぷりと入った水を彷彿とさせた。
――わからんな。
そう思いながら、ウルフウッドはぱちりと瞬く。目を見ればわかる、と男は言った。しかし、ウルフウッドが男の瞳を見ても、分かる事はひとつもない。長いまつげに縁取られた瞳。柔和な印象を覚える。それだけだった。男が何を考えているかだとか、何を抱えているかだとか、そういう事は皆目見当がつかない。
774目の前の焚き火がパチパチと小気味よい音を立ててはぜている。ちらりと横を見れば、赤いコートの男が薪をくべている所だった。焚き火に照らされたその顔を盗み見る。薄いオレンジのサングラスの下、焚き火を映した瞳がちらちらと光っていた。
瞳の色は青だろうか、とウルフウッドは思い、いや緑か、と思い直す。どちらともつかない色だった。暗がりではよく分からない。焚き火に合わせて揺れるそれは、たっぷりと入った水を彷彿とさせた。
――わからんな。
そう思いながら、ウルフウッドはぱちりと瞬く。目を見ればわかる、と男は言った。しかし、ウルフウッドが男の瞳を見ても、分かる事はひとつもない。長いまつげに縁取られた瞳。柔和な印象を覚える。それだけだった。男が何を考えているかだとか、何を抱えているかだとか、そういう事は皆目見当がつかない。