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    #キャッスルバニア

    castleVania

    Jobangnakji

    DOODLE月下の夜想曲の後、リヒターとマリアの物語
    握手冬が残した冷たさと、春先の暖かさが混ざり合い、曖昧に共存する3月の晴れた日だった。 リヒター・ベルモンドは、何も身に着けていない首を攻撃する風を防ぐために、コートをそっと羽織り、素早く近くに見えるタバーンに足を踏み入れた。 一歩足を踏み入れると、水を飲んだ木の匂いとウイスキーの香りが鼻を突いた。 まだ午後6時半だというのに、週末ということもあり、店内は結構な人出で賑わっていた。 リヒターは隅のほうの空いているテーブルに適当に腰を下ろし、軽く手を挙げてバーテンダーを呼んだ。 エールを2杯と、付け合わせのナッツを注文。 バーテンダーがこの店はポテトチップスが美味しいと提案するが、首をかしげる。 脂っこいものはあまり食べたくないからだ。 今年で二十八、三十の門出を迎えた彼は、健康に専念するために飲酒を大幅に減らした。 そのため、こうして酒場に立ち寄る日はかなり少なくなった。 しかし、特に苦しいことがあるわけでも、心に抱える悩みがあるわけでもなく、ただ胸のどこかに穴が開いたような気分だった。 その隙間に押し寄せるのが単純な寂しさなのか、気まぐれな憂鬱なのかわからないし、深く考える気もなかった。 人は本来、一人で暮らせば空っぽになる生き物である。 しかし、人は誰でもいつか一人になる。 だから人は誰でも最終的には孤独になるしかないのだ。 その事実があまり悲しくなかった。
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