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DOODLE試し妖精族は鼻が効く。鼻が効くといっても獣人のそれとはまた原理が異なる。正しく言えば、違和感へ対する感知度が他の種族に関してひときわ高い。そのことについて研究を重ねる学者もいるが、なにせ被検体がそもそもに少ない。ゆえに何にしても「一説によると」という前置きが不可欠な段階を何百年も、下手をしたらそれ以上の時間続けている。が、特に有力な説としては「閉鎖的空間での生活が主であり、外界からの刺激というのは敵意であることが多いから」というものがある。
次期王たる男のなんとも険しい顔を横目に、数日前なんとなしに目を通した学術雑誌のそんなコラムをリリアは思い出していた。
「マレウス」
「……別に何も言っていない」
それが既に答えだというツッコミは喉の奥へしまい込む。
「なにかありましたか」
そんな二人のやりとりを不思議そうに見る男、シルバー。お前がその原因だぞという言葉もまた、リリアは控える。若者の淡く青い恋路を邪魔することほど、野暮なことはない。
「なんでもない。どうだシルバー、たまにはわしと手合わせするか」
「いいのですか」
するりと話題を変えれば、男はたちまち目を輝かせ背筋を伸ばす。 700