しののめ
DOODLE「preparazione tranquilla」(よだ+ゆん|夢十夜)気持ちはよだ+ゆんですが太緒視点かつ夜鷹不在です 静かの海の後
ふ、と小さくため息を吐いて、俺は綺麗に磨いたグラスを置く。最近、仕事が多い気がする。いや、観光区長の、ではなくて。とはいえ別段、困っているというわけでもないのだが——
「太緒くーん」
「あ、はい。何かありました?」
「んーん、発注作業覚えといてもらおうかなーって。今すぐ頼むってわけじゃないけど!」
ゆくゆくはフレアバーテンディングもやってみちゃう? なんて明るく言ってのけた元凶その本人は、どこか上の空。ただ、なんとなく彼の——ゆんゆんさんの真意はそこにないような、そんな予感だけがあった。何かを誤魔化すとき、喩えるなら、一緒にやろうと約束したゲームを、先んじて一人プレイしてしまったときの千弥みたいな。
1550「太緒くーん」
「あ、はい。何かありました?」
「んーん、発注作業覚えといてもらおうかなーって。今すぐ頼むってわけじゃないけど!」
ゆくゆくはフレアバーテンディングもやってみちゃう? なんて明るく言ってのけた元凶その本人は、どこか上の空。ただ、なんとなく彼の——ゆんゆんさんの真意はそこにないような、そんな予感だけがあった。何かを誤魔化すとき、喩えるなら、一緒にやろうと約束したゲームを、先んじて一人プレイしてしまったときの千弥みたいな。
しののめ
DOODLE「知らない人」(よだ+ゆん|夢十夜) 夏目さんと夜鷹さんの間の話 ⚠︎自己解釈多めなので雰囲気で読んでください 知らない人だった。
深い夕焼けの中に、その人はぼうと立ち尽くしていた。橙に照らされながら、その口は何も紡がない。その目はこちらに向けられていない。なにか遠くを、たとえばあの太陽なんかを見つめているのか、はたまた、ただ眼前の赤色を眺めているだけなのか。
自分は、どうしてここにいるのだろう。ただ一人、目の前の綺麗な男——そうだ。綺麗だと思ったのだ。彼がそこで、一心不乱に何かを祈っているような、そんな光景を幻視した。声をかけようかと逡巡する。視界の外でぱしゃりと何かが跳ねるような音がして、そうして、ここは海だったのだと気がついた。
「……」
夕と夜の間。そんな淡い色をした男は、数瞬かけてこちらを一瞥し、落胆したようにまた遠くを見る。その視線を追うようにして、夕陽に目を向けた。熱された鉄塊のようにあかあかと燃える陽が、海に沈もうとしている。斜陽が世界を照らす。眩しくて、灼けついてしまいそうで、たまらず目を逸らしてしまった。潮の匂いが、それを咎めるように鼻につく。
2205深い夕焼けの中に、その人はぼうと立ち尽くしていた。橙に照らされながら、その口は何も紡がない。その目はこちらに向けられていない。なにか遠くを、たとえばあの太陽なんかを見つめているのか、はたまた、ただ眼前の赤色を眺めているだけなのか。
自分は、どうしてここにいるのだろう。ただ一人、目の前の綺麗な男——そうだ。綺麗だと思ったのだ。彼がそこで、一心不乱に何かを祈っているような、そんな光景を幻視した。声をかけようかと逡巡する。視界の外でぱしゃりと何かが跳ねるような音がして、そうして、ここは海だったのだと気がついた。
「……」
夕と夜の間。そんな淡い色をした男は、数瞬かけてこちらを一瞥し、落胆したようにまた遠くを見る。その視線を追うようにして、夕陽に目を向けた。熱された鉄塊のようにあかあかと燃える陽が、海に沈もうとしている。斜陽が世界を照らす。眩しくて、灼けついてしまいそうで、たまらず目を逸らしてしまった。潮の匂いが、それを咎めるように鼻につく。