N63937664
DONE玉麟と若♀ーーあなたは子猫みたいですね。なんて言いながら微笑んでマントを広げ、胸へと誘ってきたり、手を取って散策に連れて行ってくれたりしたものだから、彼は私のことも動物の類と同じ存在だと思い込んでいた。
実際抱き寄せてくれた時の温もりは眠たくなるほど暖かいし、気持ちいいし、そのマントの中には鳥やリスもいて。
彼が私に額をよせてきたその仕草も、寒英に額をむけて目を閉じる微笑みと全く同じだったから。
ーーどうせ私は彼にとっては『子猫』なのだから、いいじゃないか。
私は浮世離れしたふわふわとした彼をからかってやろうと決め、高い位置にある彼の顔を見上げた。
「ねえ相遥。いつもみたいに考えてることの当てっこしない?」
「ええ」
彼はよく、私と額をくっつけて考えていることの当てっこをする。最初は顔が近くてドキドキしていたけれど、最近はーー彼にとってこんなこと、獣といつもやってる当たり前のことなのだとがっかりさせられてばかりだった。
額を寄せても、吐息がかかる距離で見つめあっても、彼は穏やかに笑うばかりだから。
今日の彼も無防備に笑みを浮かべ、少し背をかがめて私に額を寄せてくる。 1725