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    碧@狂人

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    碧@狂人

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    【トレ監本編ダイジェスト】途中
    pixivで公開している壮大な話の一部切れ切れのまとめです。そちらの作品を読んでいないと全然分からないと思います。
    ※イベント後「こそフォロ」辺りに限定公開するか、しばらくしたら非公開にするかもな予定です。

    ##ゆあまい

    【トレ監本編ダイジェスト】途中※弊監は魔女で極度の世間知らずですが、基本的には「つわもの」です。ツノ太郎属性。あとはすべて察して下さい。

    ※pixivに上げる際には【監督生】表記は名前変換対象になります。
    ↓区切り線↓
    ------------------------------

    【ぽんぽんが痛い時用トレ監(途中】
    ※授業別でお守り役が違うスタイルなので、それが決まるまでの小話集。ちょいちょい歯抜+途中まで。

    ***

    【実技/防衛魔法】

    コロシアムで行われる魔法の実技授業。
    予め座学で予習をした上で、それを発動させて実践する授業だ。
    その他にも、自らの身を守るための防衛魔法と反対に『自己防衛』の為の攻撃魔法を織り交ぜた模擬戦闘も行われる。

    3年生にもなると、属性への対処や強化や弱体の魔法も交えた高度な技術を求められる。
    加えて、この授業を選択した生徒の面子によっては、寮対抗戦さながらのヒリついた空気で行われる事もある。
    そして彼女が参加した授業は、まさにそれだった。

    「オラァこの前は小賢しい真似してくれたもんだなこの陰険嫌味寮!!」
    「何も考えずに突っ込んでくる脳しかないからだとまだ気付かないのか?脳筋寮!!」
    「去年のマジフトの寮対抗戦の恨みをここで果たしてやる!」
    「その姿勢こそが既に負け犬の台詞だと思わないのか?」

    他寮の生徒への恨み辛み、他、ごく個人的な事情も含め。
    2年分溜まったソレを吐き出すかのように、他の争いにまで飛び火はしない距離を開けた状態の闘技場のあちらこちらで、ギャーギャーワーワー、ドッカンバッタンと、真剣勝負を繰り広げられている様子が客席からはよく見える。
    魔法の争い自体はともかく、口汚い罵りの言葉をこいつの耳には聞かせたくないなぁと思いつつ隣の彼女へと視線を移せば、顔面蒼白といった様子で酷く怯えて、微かに震えているその姿に思わず目を瞠る。

    「お、おい大丈夫かっ、【監督生】……、いや、監督生っ。」
    多少怖がりはするだろうとは予想していたがここまでだとは思わなかったので、胸の前で握られていた両手を包み込んでやりながら、視線を合わせるようにして屈み込む。

    「見たくないなら見なくていいぞ。ここから離れるか?」
    「…………、え…、でも、授業、なんでしょう……?……、……何で……?」
    「何でって、震えてるし顔色も悪くなってるぞ。」
    「そうじゃ、なくて……。」
    一度混乱を極めている騒ぎの方へと視線を向けて、こちらへと視線が戻って来る。
    「……どうして、ひとを傷付けるような魔法を、学校の授業で、習うの?」
    「    」
    これまで特に考えもしていなかった疑問をぶつけられて、すぐには返事が出て来ない。
    「今、この世界ではどこかの国と国や、種族間で、表立った戦争はしていないんでしょう?……そうなってから、結構長いん、でしょう?……なのに、どうして?…学校って、人生で必要になる知識やその活用方法を教えてくれる場所じゃ、ないの?……この授業も、必要だからやってるの?」

    「勿論、そうだ。」
    凜とした声が俺達の背後から聞こえて振り返れば、魔法石の付いた教鞭を揺らしながら立っている教師の姿があった。

    「クルーウェル、先生……」
    「仔猫。お前はこの世界の醜さや汚さも含めた、そのすべてを知りたいのだろう?それを踏まえれば、無論これはこの世界で生きていく為に必要な事を教える為の授業だ。必須科目だから、当然お前にも受けて貰うぞ。」
    「………、それは、生徒として、ちゃんと勉強させて頂くつもり、です。」
    「ふむ。では何がお前の中で引っ掛かっている?」
    「…この世界の治安についてです。この授業の必要性がある理由を、お聞きしたいです。」
    いつの間にか震えは止まって、鋭い印象のあるグレーの双眸を真っ直ぐに見据えながら、彼女は疑問を口に出す。

    「……この学園生活でもこれから嫌という程実感する事になると思うがー…。この授業の第一の目的は相手を傷付ける為のものではなく、あくまでも自分を守る為のものだ。まぁ、それについては建前や方便だと思っても構わない。いずれにせよ、確実に身に着けておいた方がいい事には変わりない。 先程お前は『戦争』と口にしていたが、人を傷付けるのはそれだけではない。組織・個人に関わらず犯罪者という者はいつの時代も存在する。そして魔法が使えない人間が多いこの世界において、数少ない魔法士が力を用いて犯罪を引き起こす事もある。無論、魔法が使えない者も同様だ。銃でも刃物でも、人を傷付ける輩がいなくなる事はない。それが、この世界だ。」
    「……そういったものから身を守る為の、授業という事ですか。」
    「防衛魔法だけでは駄目なのかとでも言いだけだが、駄目なんだよ、仔猫。後手の対応だけでは駄目だ。それだと最高の結果はあくまでも『人的被害は出なかった』で留まってしまう。先手を打って相手を無力化し、そもそも『被害が出ない』ようにするのが肝要だ。防衛魔法は主に術者やヒトを対象とする。例えばヒトが無事でも、森や建物が燃えてしまっては結局ヒトの生活に影響と被害を及ぼしてしまう。その為の抑止力としての立ち回りを学ぶのが、この授業という訳だ。」

    「……お前はそういったものとは無縁な人生を送ってきたのかもしれないが、この学園で学ぶのなら、まずこの現実社会がどんなものなのかを知っておくべきだな。トレイン先生に近代学の本でも借りるといい。……ともあれ、見学は充分なようだから、次はお前の実力を測らせて貰う必要がある。クローバー。マジカルペンを寄越せ。」
    「……それは、どういう?」
    俺が質問するのと同時に、胸ポケットのマジカルペンがすっと教師の手の中に吸い込まれるようにして飛んでいく。
    ペンを軽く握り、目の前の大人は目を細めて教師らしからぬ、まるで悪童のような笑顔を浮かべてクク、と笑った。
    「お前には『的』になって貰う。」



    多種多様の属性を帯びた魔法が一斉にこちらへと向かってくる。
    俺が標的とはいえ、とんでもない奴らだ。範囲の広い魔法だったら彼女にも影響が出てしまう。いざとなったらマジカルペンを使わずに魔法を発動させようと身構えると、ヒュッ、と風を切るような音と共に、彼女がホルダーから取り出した杖を袈裟懸けの様に大きく振るった。
    それと同時に俺と彼女の周りにシャボン玉のような薄い膜が張られて、バチン、と飛んできた魔法の全てがその障壁に阻まれ、そのまま消えるのではなく球体の表面上を滑るようにぐるぐると移動する。
    「……これは火。これは風。これは水。」
    ぽつぽつと独り言のように呟きながら、属性の色を帯びて走り回るそれらひとつひとつを杖で示していくと、一瞬にしてふわりと魔力が相殺されて散っていく。
    ……反対属性の魔法を使って中和させて、いるのか。
    その様子をただ驚いて見ていると、白や黒の光を帯びた所謂無属性に分類される魔法が残された球体の中で、彼女は小さな頭を軽く傾げた。
    「……これは……?」
    素直に解らない、といった様子で一言ぽつりと溢していると、今度は自分達の死角になる方角からまた無数の魔法攻撃が飛んできた。
    大人気ない。し、そいつらの視線があからさまに彼女に対する下卑た色を浮かべていて眉間に皺が寄る。クソ、俺もやり返してやりたい所だが、これも含めた『計測』という事なのだろう。まったく、人の悪い出来る教師だ。
    魔力反応を感じた彼女がくるりとその方向…俺の方へと振り返ったので、声をかける。
    「【監督生】。これだとあくまでも防衛しているだけだ。次の魔法が飛んでくる前に無力化する必要もある。ついでに、これまで魔法をかけてきた奴ら全員に次の機会を与えなくさせる為に、お前ならどうする?」
    「……クルーウェル先生は、トレイくんのマジカルペンを没収してたね。」
    魔法を制御する事に集中しているのか、いつもの解り易い表情も今は鳴りを潜めている。
    「……それにしても。」
    「……ん?」
    「ひとを傷付ける魔法を使いながら、あんな風に笑えるものなんだね。……本当に、色々と勉強しなくちゃ。……今もね、ひとつ分かったよ。」
    先程と同じように3属性の魔法を解除しつつ、俺の近くまで歩み寄って来る。
    「自分を守るためっていうのにはピンとこなかったけど、トレイくんを傷付けない為、なら、解るし、出来るし、……します。」
    そのまままたくるりと半回転して、まるで俺を守るように真横にピッと杖を振る。
    と、俺達を囲んでいた球体が上から崩れ落ちて地面に吸い込まれたように見えた後、その場所がバチバチッ!!と雷を帯びて魔法陣のような輪を刻む。
    「Gwasgariad,」
    彼女が詠唱と共にタン、と音を立てて片足で地面を叩くと、俺には何も感じられなかった緑の光が一斉に地面を伝って色んな方向へと走り、恐らく俺に向けて魔法を放ったのであろう生徒達の足元へと届くのと同時にバチン!とマジカルペンを持った手に小さな雷が走り、それぞれが悲鳴と共にペンを落とす。
    その阿鼻叫喚な様子に呆気に取られていると、またどこからか違う何かが飛んできて、
    それはそのまま、彼女の頭にコツン、と命中した。
    「いっ…!」
    「【監督生】!」
    地面に落ちたそれは、俺のマジカルペンだった。

    「クッ。ハハハ!!面白い。お前は実に面白いなぁ、仔猫。」

    「仔猫。治癒魔法の心得は?」
    「あります。………必要、ですか?」
    「お前はその必要ないと?」
    「ヒトを傷付けようとしたんですから相応の痛みは必要かなと、思います。それに、ペンを取り落とすくらいに加減をしたつもりです。……それ以上の深手を負っていたとしたらそれは……術者の方の何かしらにおける悪意のある想いの反動でしょう。そういう魔法に、しました。」
    「……その怪我の程度が酷く、重症だとしてもか?」
    「少なくとも私は治しません。自分でかけた魔法の代償は自らが負うべきでしょう。先程見学をしていた限り個人的な事情が含まれていても問題ないようでしたのでー……彼を傷付けようとした事に対する、私の仕返しだと思って頂くしかないですね。どちらにしろ、それをサポートして下さる施設や仕組みがあると思っているのですが…。それこそ、この世界のやり方で治療して貰った方がいいと思います。……私の魔法では、逆に傷口に塩を擦り込むようなものになってしまう、かも、しれませんので……。」

    淡々と冷静に応答していた表情が、終盤になって消沈するように揺らぐ。
    最初は少し怒っている様子だったのが、人を傷付けてしまった後悔へと挿げ換わるかのように、解り易く。

    「……一見仔猫に見えるが、その地面に映る影は巨大な獣なのかもしれないな。あれは。」
    「……俺はいい所も見せられずに、ただ凜とした彼女に魅入られただけでしたよ。」
    「お前がマジカルペンを持たずに魔法を発動させようとしていたのが、また仔猫の何かに触れたんじゃないのか?」
    「……否定は出来ませんが……、それでも、俺はそのつもりでしたよ。」
    「シェーンハイトとも話したんだが、確かにお前達の相性は最悪だな。」



    結果的に。
    『お前達を一緒にすると必要以上の力を行使しかねない。それぞれの防衛という事における沸点が低いのも問題だ。』
    とお互いに何も言い返せない理由の元、実技魔法を得意とし、また彼女のサポートも出来るだろうという事でリドルと同じ2年生の授業を受ける事になった。

    「何やら派手にやらかしたようだね。このボクと一緒にいる限り、あくまでも限度を弁え、且つ完璧で模範的な生徒として、相応の姿勢で授業に臨むように。」
    「うんっ。リドルくんと一緒に授業受けられるの嬉しい!頑張る!」
    にっこにこといった様子で嬉々として告げられた言葉に一瞬面食らったリドルが、コホン、とひとつ咳をしてからむに、と彼女の鼻を摘まむ。
    「ぇぅっ、」
    「リドル寮長、またはリドル先輩、だよ。監督生。そして目上の人間には敬語を使うんだ。そういった面でもしっかりと指導していくから覚悟するように。返事はもちろん、お分かりだね?」
    「ふぁぃ、りょうちょぅ……」
    「よろしい。」

    手を外しつつ満足げに笑った笑顔には、寮長や先輩としてのものだけではない彼本来の柔らかさが滲んでいて、自然と目を細める。
    リドルなら彼女の面倒をしっかり見てくれるだろうし、何よりお互いに緊張の糸を、きっと程よく解してくれるだろう。

    文句なしの、結果だ。







    【体力育成・飛行魔法】

    広々としたグラウンドに、今日もまた体育教師の雄々しい雄叫び…もとい、指導の声が響き渡る。

    「筋肉以前にまず病弱だと聞いているが、魔法は得意らしいな!箒を使った飛行術の経験は?」
    「……無い、です。」

    体格が良い大人であり、何よりその声の大きさと圧に怯えつつ出てきた答えは、俺にとっても意外なものだった。

    「……そうなのか?魔女なのに?」
    「一定の高度以上にも結界があってね。それに森の中の用事には必要もなかったし、遠くに行く時はおばあちゃん達が一緒だったから…。そもそも箒に乗ってた人自体、少なかったみたい。インドア派?のひとが多かったらしくて…」
    俺の運動着を掴んでいる彼女とぽそぽそと小声で会話をしていると、「意見は大きな声でハッキリと!!!」と溌剌とした注意が飛んできてビクッ!と隣の小さな身体が飛び上がる。

    「バルガス先生。彼女は物静かな環境で育ち人との交流にも慣れていないので、なるべく驚かせないようにして頂けると助かります。萎縮させてしまうと本来の力も出す事が出来ません。」
    「ムッ。それは失敬!だがな監督生、元気な挨拶や発声は咽喉や腹筋の成長にも繋がる!少しずつ慣れていくようにするんだぞ!」
    「は、はいっ!」
    「よし!じゃあお前にはまだ専用の箒が無いから学校の備品をー……~~おぉっっ!?!?」

    先生がそう言うや否や、呼び出しの魔法を使うまでもなく体育倉庫のある方角から数本の箒が我先にと物凄いスピードで飛んでくる。
    そして急ブレーキをかけてキキキ、という音でも聞こえそうな減速をした後、彼女の前に綺麗に横一列に並んだかと思えば、藁の部分で恭しく跪く様に角度を変えた柄の部分が、一斉に彼女へと向けられた。
    まるでパーティー会場で一人の御婦人を巡ってダンスにでも誘っているような様相だ。率直に気に食わなくて眉間に皺が寄る。

    「監督生。俺の箒でよければ使うか?特に変な癖は付いてないと思うし。」
    皺を消して笑いながら優しく話しかければ、「あ、ありがとう。けど、えと……うぅん……、」とちらりとこちらを見上げて、また目の前の箒達へと視線を戻す。そして何度か頷くような素振りを見せるのを、俺も先生も、他の生徒たちも何だなんだといった様子でその場を見守る。

    「……はい。では、あなたに、お願いしてもいいですか?」
    少しして、彼女は中でも一番古そうな箒に声をかけた。

    「……箒の声でも聞こえるのか?」
    「ううん。言語としてのものじゃなくて、相手が伝えたいと思っている類の意思を、何となく感じるだけ。古くて魔力のあるひと達はそれが特に解りやすいの。このひとが一番の古株で、初心者を乗せるのにも慣れてるって。」
    「確かにそれが型としても一番古い箒だ!まぁ俺様達がフォローしてやるから、とりあえず好きなように飛んでみるといい!」
    「……箒に跨って、そのまま地面から足が浮いて、宙に浮かぶイメージをすればいい。お前ならきっと問題なく飛べるさ。」
    「う、うん……。」
    自由度が広過ぎる指導に具体的な説明を混じえて説明してやるが、やはり不安そうだ。
    なので俺も箒に跨って、それに倣うように促す。

    「俺の動きを真似する感じで。そうそう。箒にかかる自分の身体の重心を意識して、バランスを崩さないように。慌てなくていい。ゆっくり。」
    箒の柄を握る手に変な力が入っているのが見て取れたので、より落ち着かせるように間を空けながらひとつひとつ丁寧に指示を出す。

    「うん。背筋を伸ばした方がいいな。体幹が安定する。そうだ。そのまま、イメージ。」
    「足を地面から浮かせる。……宙に浮いて…静止する。」
    教科書に載っている基本的な姿勢が取れたのを確認して声をかければ、ぽつぽつと言葉を紡ぐのと同時に箒に跨った小さな身体がふわりと、それこそ風に乗るように緩やかに浮いて、その状態が維持される。
    魔力の籠め方やイメージ次第ではあるが、こういったゆっくりとした動きは逆に初心者には難しい。そして同じ状態を過不足無く保つことが出来るのもまた同様だ。

    「おおっ!いい感じだぞ監督生!!もっと高く飛んだり早く飛んだり出来そうならしてみるといい!!」
    「高く…早く…」
    バルガスの大きな声に怯えるでもなく、ただその言葉を反芻する。集中している状態のようだ。

    「監督生。少しずつでいいぞ。一気にじゃなくていい。」
    「……うん。この箒さんのおかげで、安定してます。…有難うございます。」
    こちらに視線を寄越して嬉しそうに笑った後で、そのまま俯いて箒に礼を述べる。不思議な光景だが、不思議と不自然ではない。まぁ俺がやったら不自然さしか無さそうな所作だ。

    と、

    彼女が箒に礼を述べた途端、スーッと真っ直ぐ上に高度を上げたのでそれに続く。
    揺らぎが一切無いその動きは、まるで戦闘機か何かがエレベーターで運ばれて滑走路に移動していくような様子で、
    上昇する動きが止まり、ほんの一秒ほど、勢いをつける為の予備動作のように少し後ろに下がったかと思えば、

    次の瞬間には彼女の前に競り集まってきた時と同じくらいのスピードで、直進していった。

    先程とは違い、今度は彼女を、乗せたまま。

    「     っ   」
    「監督生!!!」

    声もなく発進しあっという間に小さくなっていく背中を追おうと構えると、漸く遠くから「ひゃぁぁぁぁぁ」的な高い悲鳴が聞こえた。が、それさえもどんどん小さくなっていくので慌てて自分も加速する。

    「先生!!地上でのフォローをお願いします!!」
    「ああ!!任せておけ!!」
    コンマ数秒を争うようなこういうトラブルが起きた時にどちらが指示を、だとかそういった引っ掛かりも無くすぐに動いてくれるのは正直助かる。
    いざという時には頼りになる人だ。万が一彼女が箒から落ちるような事になっても怪我をしないように立ち回ってくれるだろう。
    しかしそうならないに越したことはない。
    姿勢を低くして風の対抗を極力少なくしながら暴走していった箒を追う。

    「監督生!!」
    このまま学校の敷地外にでも飛び出す勢いだった箒が、急に柄の先を示す方向を変えてぐるりと縦に一回転した。
    あ、の。馬鹿箒。
    自分はこんな事も出来るベテランなのだと示したいのか知れないが、完全に女の子にいい所を見せたくて調子に乗っている浮かれ箒だ。二度と彼女を乗せたりするものかと舌打ちしながら自分は上昇する事なく真っ直ぐに進んでいく。
    案の定、高度と重力の変化に耐え切れない細い身体が力なく箒から離れて、箒は勢いのままに飛んでいき、小さな体躯が宙に取り残される。
    旋回のタイミングの影響でしばしの滞空時間が生まれ、その間に彼女が落ちてくるであろう位置まで急いで移動し寸前でブレーキをかけて減速しながら両手を柄から離して身構える。
    バランス維持の為に使っている風魔法を応用して、落ちてきた身体に負担がかからないように一瞬出力を上げた後、ふわりと降りてくる身体を受け止めた。

    「    、……はぁー………」

    無事にキャッチ出来た事に心底安堵して深く息を吐いていると、地上で同じくセーフティを構えていたバルガスが「よくやった!!!」とよく通る声でサムズアップをする。

    「やっぱりマジフト部に入れクローバー!お前ならすぐにレギュラーになれるぞ!!」
    「いえ、せっかくのお誘いですが遠慮しておきます。それより、監督生を保健室に連れて行きたいのですが。」
    「ん? ……ああ。急な変化に耐えられなかったのか。これから体力と筋肉を鍛えていかないとな! そしてコンディションを整える事もまた大事だ!行ってこい!」
    「はい。失礼します。」
    都合のいい部分だけに返事をして箒に乗ったまま保健室の方へと向かうと、後方からまごまごとした様子で古びた箒が付いてきたので、振り返らずに語りかける。

    「操縦者のいう事を聞かない箒はどうかと思うぞ。」
    俺の言葉が伝わるのかなんて分からないが、併走している箒はあからさまにしょんぼりとした様子で藁の束を下に下げた。

    「……」







    【魔法史・動物言語学】


    「何となく分かるか?」
    「何にも分かりません……」
    「だよなぁ……」

    魔法史の教科書の年表の部分を見せて問えば、予想通りの答えが返ってきた。

    *ここまで。
    ※魔法史についてはディアソ3年組の小咄や派生があり、動物言語学は監さんは自分の言葉でダイレクトに伝える(聞く方は明確な言語というよりは何となくという感じ)という学問とは違うやり方なので1年組と一緒です。

    ------------------------------

    【episode-1―004 / 臨戦プレパレーション!】
    ※pixivにあげている本編の続きの話。歯抜け+途中。

    ***



    「クローバー、まずはこれを飲め。」

    少し遅れて合流にした俺に対して、クルーウェル先生は教鞭を軽く振るうと中に何かが入ってる水の玉を、魔法で口元へと移動させる。

    「これは何ですか?」
    いきなり正体不明のものを飲めと言われてそのまま素直に飲めるほど、俺は従順な生徒ではない。
    けれど彼女は飲んでしまいそうだな、と同時に先程の姿が脳裏にちらつく。

    「市販されている鎮静剤だ。お前はどうもあの仔猫の事になると落ち着きがなくなるようなのでな。変に激昂されて話が長引くのは困る。」
    今まさに思考が落ち着き無く右往左往してる自覚があるので、ぐ、と口を噤んだ後で大人しく口を開いた。確かに、話が長引いてその分あの待ち人を部屋に置いたままなのは困る。
    すっと動いた水の塊は口の中に入るとすぐに弾けて、途端に魔法薬特有の不味さに眉を顰めながらもゴクリと嚥下した。
    その様子を見届けた後、懐から懐中時計の時刻を確認しつつ、何から話すべきかを考えるかのように教鞭を指先でくるりと回して視線を上げる。

    「お前達が会議室を出た後で、あの仔猫の父親だという魔導書から生い立ち等の説明を受けた。ちなみに、その本の存在の事は仔猫には絶対に言うなと厳に脅されもした。クローバー。この時点でお前は何を思う?」

    父親、という予想もしていなかった存在の名前が出てきて目を瞠る。
    そんな俺の反応を含め、クルーウェル先生はじっと答えを待つ。

    「父親を名乗る魔導書…?初耳です。彼女は両親の事はほとんど何も知らないと言っていました。森に住む動物達が家族で、その家族と魔法道具の数々が面倒を見てくれたと。」
    「……成る程。疑問はあるだろうがそれらは全て後でローズハートに聞くように。次の質問だ、仔犬。お前はあの仔猫に好意を抱いているな?」
    「………はい。他の誰にも渡すつもりはありません。」
    質問自体の意図を汲み取って、正直に答える。
    照れるだとか、踏み込むなと反発するような問いではないだろう。
    「具体的にはどうするつもりだ。すぐに自分のものにするつもりなのか、成長を見守るつもりなのか。率直に答えろ。」
    「そ、れはー……」
    彼女はあまりにも、昔のままだった。
    無垢で、純粋で、世間を知らず、恐らく抱いている常識にもこの世界のものとは齟齬があるだろう。
    他の誰にも渡すつもりはない。
    離すつもりも、離れるつもりも毛頭無い。
    その覚悟だけはあるが、『身も心も』と言われると、即答するのは憚られた。
    先程、キスをしようとした時の彼女の反応。

    『キスをしたら赤ちゃんが出来るかもしれない』と。 確かに、言っていた。

    顔を真っ赤にして、必死な様子で。
    その後に『それも悪くはない』、とも。
    ……悪くないんだな。と思い返すと自然と口元が緩みそうになるのをどうにか抑えていると、その沈黙こそが答えだと捉えられたのか、目の前の教師はひとつ息を吐き出すのと同時にパチンと指を鳴らして、俺の目の前にいくつかの小瓶や包みを召喚した。
    咄嗟にそれを両手で受け止める。
    それぞれラベルが貼られてはいるが、特に何も書かれてはいない。

    「これは?」
    「鎮静剤の類がいくつかと、睡眠導入剤だ。安定剤も必要な際はまた言え。」
    「鎮静剤……?」
    「精神を落ち着かせる効果がある物と、性欲抑制剤だ。」
    「せっ……」
    「必要だろう?」

    あまりにも直球な物言いにギシリと身体が強張る。
    そんな俺の様子を見て、事も無げに教師は続けた。


    ※略※




    「リドル。ちょっと試したい事があるから協力してくれないか?」
    「なんだい? 構わないけれど。」
    「有難う。助かる。」

    そんなやり取りをして、俺の部屋のドアの前に立ったリドルがノックすると、扉越しに小さく、カシャ、と何かを落としたような音が聞こえた。
    その音が軽く、怪我をするようなものではないであろう事を祈って、きっとビクついているであろう姿を想像しながら優しく声をかける。

    「【監督生】。俺だ。トレイだ。ドアを開けてくれないか?」
    そう声を掛ければ、最初に俺の声を認識した瞬間からこちらに一目散に駆けてきたであろう気配を感じる。
    クソ、本当に可愛い。嬉しくて可愛くて堪らない気持ちになる。が。

    「トレイくん!おかえりなさい!」
    鍵が外され、あっという間にドアが開いて、眩しい笑顔で出迎えられる。

    だがドアを開けたその目の前にいるのは俺ではない。リドルだ。
    ノックをする為の手を維持したまま、目が合った大きな瞳が四つ、きょとんと瞬きをする。
    その様子を少し離れた所から眺めて、微笑ましいながらも俺ははぁ……と溜息を零した。

    それを耳にしたリドルが「成る程。」と。
    ぽつりと零して、俺と同じ意味合いであろう溜息を吐き出す。

    「……これはなかなか。手を焼きそうだね。」

    聡明な幼馴染は俺のした事に合点がいった様子で、軽く肩を竦めて苦笑いを浮かべる。
    嬉しさと、心配と、優しさと、厳しさと。
    無防備極まりないこの新入生に、一体何をどうやって説明したものかと、困ったような、けれど使命感のようなものを湛えた穏やかな表情で、目の前で固まっている少女を見つめた。

    灰色の瞳と対峙している夜闇の瞳は、最初に瞬きをしただけでじっと目の前の少年を見つめている。
    驚いた表情のまま固まって、それでも目を逸らすこともなく。

    そして再度瞬きをした次の瞬間には、頬を紅潮させてはち切れんばかりの笑顔になった。

    「始めまして。ボクは――
    「リドルくん!!!」
    礼儀正しい初対面の挨拶のお手本を見せるように優雅な仕草で行われようとされたそれは、優雅とは程遠い忙しなさに上書きされた。

    「ラブラドライト、イーグルアイ……ユーディアライト! ばら色の髪もすごくきれい!」
    きゅっと両手でリドルの手を握ったと思えば、ずいっと至近距離まで顔を近付けて候補が定まるまで石の名前を流れるように紡ぐ。
    そうして自分の納得のいく答えが出るの同時に、ぱっ、と両腕を広げて勢い良く抱き着いた。

    「    、  」
    「想像してたよりもずっとずっときれい! 逢えて嬉しい!!はじめまして!」
    自分の感想を捲し立ててから、漸く初対面の挨拶の言葉と自分の名前を名乗る。

    「…………。」

    すりすりと動物が懐くように身体を寄せられている本人は、硬直していた。
    まぁ、心情は察するに余りある。


    *ここまで。
    ※後半3人の中で一番冷静なのはリドルくんなので色々世話を焼いてくれます。というか最初からそうなのですがうちの♣️先輩はかっこよくないし対監においてはポンコツでリドルくん以外には大人げないです。「普通」の男子高生、と主としているので、ただの恋に振り回される高校生です。かわいいね。

    ------------------------------

    【本編ダイジェスト】
    ※ゲームの方のストーリーが一区切りしたら書いていきたいと思ってはいます。思ってはいる。

    ***

    【第3章】のやり取り。

    「こんな契約はナシだろ!?酷いと思わねぇ!?」
    「……? でも、エースくん達は自分達の意志で契約書にサインをしたんでしょう?無理矢理操られて…とかじゃなくて、お互いに合意をしたものなんでしょう?」
    「そうだけど!他にも同じ契約をしてる奴が沢山いるだなんて、聞いていなかった!」
    「詐欺なんだゾ!!」
    「……うーん……?」

    3人の言っている事が理解出来なくて、首を傾げてしまう。
    ……『一方的な契約』、と言われたら、私も苦い想いと心当たりがあるので同情もするけれど、双方の合意の元で成された契約なのだから、それを私がどうにかするのはお門違いだと思う。それに、

    「契約する時にその旨の確認はしなかったの?口頭で説明を求めたりとか……、あとは……、…契約書に書いてある事にはちゃんと全部目を通した?」
    「あんなちっせー文字全部読んでなんていられないんだゾ!!」
    「   、……エースくんと、デュースくんも?」
    グリムくんの言葉にひとつ瞬きをして視線を2人に向けると、揃ってうんうんと力強く頷いていた。
    ……これは、何て言えば、いいんだろう。

    「……えー…と……、あの。それはー……、私が介入出来るものでは無い……かな……。」
    「何でだよ!」「どうしてだ!?」「魔女なのにか!?」
    「魔女だから、だよ。みんなの話を聞いてる限り、きちんと成立してる契約だもの。だから今その契約に則った魔法が発動して、頭にイソギンチャクが付いているんでしょう?」
    「お前のミラクルパワーでどうにかなんねーの!?」
    「……ううん……。私がどうにかするとか以前に、するつもりが、無いの。」
    「なんて薄情な子分なんだゾ!!!」
    「そう言われても……。だって契約書の内容をきちんと確認しないでサインするだなんて、下手すれば命だって取られかねないのに。それを思えば……、充分『慈悲深い』んじゃないかな?」
    「なんだそれ、魔女の常識怖過ぎなんだけど。」
    「……多分魔女に限らないことだと思うんだけど……」
    「まったくだ。全部自分達の自業自得じゃないか。耳を貸さなくていいよ、監督生。」

    「そもそも、事前に対策ノートを見てその答えだけを丸暗記して書くのって、それでいいの?テストって、普段の授業の積み重ねで得た知識や、それらから解答を導く能力を試すものじゃ、ないの?知恵試し、みたいな。」
    「「「うっ………」」」
    「それに、丸暗記してもすぐに忘れちゃうなら知識としても残らないし、その知識の積み重ねがあってこそ、学年が上がって、更に難しい勉強を教わる権利が与えられるものじゃ、ないの?」
    「「「ぐっ………」」」
    「………違う?私の認識が違っていたなら、ごめんなさい。」
    「違ってないぞ。全部正論だから何も言い返せないだけだ。確かに学年だけ上がっても、授業についていけないだろうな。」

    *ここまで。
    ※3章で砂にされたおじたんの契約書の内容はどんな内容だったんですかね~そろそろ明かされるかな~

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    【episode-x2―001 / 初恋ディテクション!】
    ※pixivにあげている4章ギスギス話の後、恋心を自覚した監さんがいてもたってもいられなくなる話。冒頭のみ。

    ***

    恋という、もの。

    甘酸っぱいだとか、ほろ苦いだとか、レモンがどうこうだとか。
    物語で綴られれば激しく、情熱的で、直向きで。
    切なさで身を焦がし、ついには自分自身からも、赤の他人からも、命の灯を奪い尽くしてしまうような。ひとつの国を、破滅に導いてしまうような。
    劇場に立つ役者のように、どこか違うところから、大袈裟な演出をかけられているような。
    言い知れぬ不安を抱えながらも、己の役に浸り、恍惚とした高揚感を覚えたまま、されど舞台の幕は自然と降りることもなく、ただただ浮足立つような足取りで、踊り続けているような。
    道化のようでいて、その実ありのままの自分であって。

    頭の中も心臓の鼓動も、何もかもが目まぐるしくて、事実目が回って何も見えなくなってしまったように、くらくらする。

    とどのつまり。

    私はトレイ・クローバーというひとに、恋を、している。






    「【監督生】。何だその荷物は。」
    「私の鞄ですが……?」
    「そんな物持ってどこに行くんだ。」
    「…………どこか、適当な、ところです……。もちろん、適した場所、という、意味です………」
    「駄目だ。」
    「……どうしてですか?」
    「どう考えても悪い予感しかしない。」
    「……寮長からは、許可を頂く……つもりです。」
    「じゃあ一緒にリドルのところに行くぞ。」
    「……私ひとりで、大丈夫です。」
    「いいから。リドルがいた方が冷静に話せるだろう。俺も、お前も。」
    「……怒ってますか?」
    「怒ってる。だから説教もリドルと一緒にする。ほら、鞄は置いていけ。」
    「……いえ、持っていきます。」
    「分かった。なら俺が持っていく。行くぞ。」



    「……それで?一体ボクに何の許可を求めるつもりだい?」
    「しばらくの間の、外泊許可を……」
    「宿泊先は?」
    「……この寮の外れとか、学園内のどこか、適当な……適した……場所……です。」
    「外部で宿泊をする、その目的は?」
    「……自分探し……の、ため……?」
    「トレイ。何かあったのかい?」
    「別に何も。ただ今から喧嘩に発展しそうだなとは、思ってるな。」
    「それはボクが許可を出すと発展する類のもの?」
    「俺の方はそうなるな。逆に許可を出さないと、コイツの方がそうなるか。」
    「そうです。爆発してしまいます。」
    「爆発……?何がだい?」

    「トレイ先輩の事が好き過ぎて、私が爆発してしまいます。」

    「……そういうのは部屋で2人でやってくれないかな?ボクも暇ではないんだけれど。」
    「いや、痴話喧嘩……かも、しれないが、割と深刻な事だ。コイツ、本気で家出するつもりだぞ。」
    「家出…………。」

    *ここまで。
    ※ずっとトレイ先輩が葛藤していたあれこれもまとめて一気に察した監がキャパオーバーになり、監督生が先輩から逃げ回るのを面白がった他寮勢も巻き込んでドタバタする話。自覚前も後も惚気に巻き込まれるのでつつける時はとことんつつく。それがNRC。


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    【倦怠期をしてみたい話】
    ※↑後、落ち着き、順当に段階を踏み、えっちも済ませ、それにも慣れてきたころ。
    一応エロの導入話なのですがまだ全然なので。
    今回描こうとしている漫画が似たコンセプトです。ちょうど↑と↓の中間くらいの話かもしれない。

    ***

    「実家に帰らせて頂きます。」
    「誰の差し金だ? エースか? ケイトか?」
    「い、言いません。」
    「オンボロ寮……いや、綺麗になったから何て呼べばいいんだろうな。 まぁとにかく、あそこか。」
    「わ、分かりません。」
    「一応理由を聞こうか。」
    「お、教えません。」
    「じゃあどっちにしろ駄目だ。」
    「どっちにしろって!?」
    「リドルが理由も告げない外泊許可申請を受理する訳ないだろ。」
    「り、リドルくんにはちゃんと言います!」
    「副寮長、及びルームメイト、何より恋人の俺に言わないのはどうしてだ。 ちなみに、リドルもそういう婚姻前の不貞の類は嫌いだぞ。」
    「そっ、それこそそうなったら、その、本当に良くないことになるでしょう!?」
    「成る程。『今の俺達』だからしてみたい、と。」
    「うぅ~っ……、そうです! ご理解頂けましたか!」
    「理解はした。だけど駄目だ。」
    「どうして!?」
    「  ―――………………。」
    「っ、ふぇっ! な、なんれうにうにするのっ!?」
    「お前、前に飛び出して行った時にどれだけ方々に迷惑かけたか忘れたのか?」
    「あのときはっ、みんなたのしそうにきょうりょくしてくれてましたっ!めいわくとは、言われてないですっ!」
    「知ってる。それにどうせ今回だってそうなるんだろうとも思ってる。だから駄目だ。」
    「ちゃ、ちゃんと色々な許可は、取りますっ!」
    「そういう問題だけじゃない。」
    「な、なに……?」
    「前回の時もだが、単純に俺がムカつくし、心配だからだ。」
    「安全性にも万全を期しますっ。」
    「ムカつくって言っただろ。……解った。ハッキリ言う。対象が何にせよ俺は嫉妬するから行かせたくないし、お前が傍にいないと寂しい。だから駄目だ。」
    「……ぅ……、」
    「ご理解頂けたか?」
    「…………、…………」
    「【監督生】。返事は?」
    「   ―――………っ、……そ、そういうところっ。」
    「? どういうところだ。」
    「まさしくここ、ですっ。と、トレイくんはっ、そのっ、過保護、ですっ。」
    「大切な恋人なんだから当たり前だろ。不満か?」
    「ふ、……不満……、………~~…… 」
    「何か不服があるなら遠慮なく言ってくれていいぞ?」
    「不服………。 ……~~……っ、そうっ、不服、ですっ。」
    「具体的には?」
    「だからっ、そういうところっ。」
    「言語化してくれ。」
    「過保護なところっ!」
    「反抗期か。」
    「そうです!」
    「それをやってみたい、と。そういう事か。」
    「そうです!」
    「ふむ……。」

    確かに彼女にそういった時期があるのかどうかは定かではない。

    *ここまで
    ※結果どう転んでも嫉妬した分だけきっちりとお返しをする話。


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    これくらいでおわり!
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