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    碧@狂人

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    碧@狂人

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    トレ監の書きかけ小説のまとめです。
    ※イベント後「こそフォロ」辺りに限定公開する予定です。

    ##ゆあまい

    【トレ監書きかけ小説まとめ】書きかけの小説色々です。
    ※弊監は魔女設定なので魔法が使えます。世間知らずです。
    ※pixivに上げる際には【監督生】表記は名前変換対象になります。
    ↓区切り線↓
    ------------------------------

    【ぽんぽんが痛い時用トレ監(途中】
    ※オンボロ寮をミニゲームとして改築していくシステムを考えていたらピカピカ寮になってしまったなという心持ちになる前に手を付けていたもの。
    付き合っている状態。

    ***

    「エースくん、デュースくん、グリムくん。これ、食べて貰ってもいい?」
    「構わないが、今日は一段と量が多くないか? ほとんど残ってるじゃないか。」
    「せめてもう少しくらいは食べろよ。あんまりオレ達が食べ過ぎるとトレイ先輩やリドル寮長にみんな纏めて窘められるから。」
    「オレ様は量が多いのは大歓迎なんだゾ! エース達が食わないなら全部オレ様が食ってやる!感謝しろよ!」
    「うん。有難うグリムくん。」
    「僕達は食べないとは言ってないぞグリム! …監督生、あと一口二口くらい、食べられないか?」
    「んー……と……。……今ね、すごく眠いの。だから更衣室で少しでも長くお昼寝したくて……。 あ、もちろんちゃんと鍵とかはしっかりかけるから、みんなはのんびり食べてていいからね。もし先輩達に何か言われたら、私のせいだからって、伝えておいてくれるかな? 色々とごめんね。 それじゃあ私、先にー……
    「監督生。」
    「っ!!はいっ!!」

    後はこの食堂から更衣室に着くまでの間に見つからなければー……、と思っていた矢先に背後から声をかけられて、ギクッと背筋を伸ばす。

    恐る恐る振り返れば、ランチプレートを手にしたルームメイトが軽く腰を曲げて至近距離で私の顔を見つめると、すぐに解りやすく眉間に皺を寄せた。

    ……ああ。チェックメイトだ。

    「……今日の午後の予定は?」
    「……魔法史の授業と、夕食前にハリネズミさんの当番が、あります……」
    「エース、デュース。トレイン先生に監督生は早退したって言伝を頼む。あと眠くても頑張って板書だけはこなしてくれ。2人で前後編になってもいいから。 ハリネズミの当番は俺からリドルに頼む。今日は寮内で書類作業をするからいい息抜きにもなるだろうし、お前は後日リドルの当番の時に同席させて貰え。それも言っておく。 で、放課後は?」
    「…………」
    「監督生。」
    「……お、オンボロ寮の、お掃除を……」
    「マレウスか……。リリアに『今日お前は行けない』って伝えて貰う。……『いつもの原因のものではない』とも、付け足せばいいか?」
    「………はい………。」

    見事に外堀を埋められて、私は力なく項垂れた。
    せめて魔法史の授業くらいは、受けられると思ったのだけど。
    それにマレウス先輩との約束だって、次に予定が入れられそうなのは、いつ頃だっけ。 いつも時間をかけるから、他の用事が入っている時にはスケジュールに組み込めないのに。
    頭の中で自分の日々の予定をズラしていかなければならない事に更に頭を下げると、カチャ、とテーブルの上にランチプレートが置かれた。

    「3人共、これも食べてくれ。仲良く分けるんだぞ?」
    「トレイ先輩も食欲が無いんですか?」
    「いや、このまま監督生を寮に連れて行くから。だから早退するって言伝は頼んだぞ、デュース。」
    「  、だ、大丈夫です。1人で帰れます。トレイ先輩はちゃんとご飯、食べて下さい。」
    「早々に俺の目から逃げ出そうとしてた奴の『帰る』を信用すると思うか? 昼食はお前がちゃんと食べるのを見届けてからじゃないと食べない。何なら食べられそうだ?」
    「……ぜ、ゼリー、とか……?」
    「ふむ。さすがに作ってる余裕はないな。購買部に寄るか。ほら、行くぞ監督生。慌てないでゆっくり立てよ。」
    そのまま手を引かれて、言葉の通りゆっくりと浮いた腰に手を回されて補助される。
    視界が拓けた事で食堂中の視線がいつもよりも更にチクチクと刺さっている気がするけれど、目の前の先輩はどこ吹く風といった様子だ。

    「……何か文句があるなら言ってくれて構わないが、対価にここからお前をお姫様抱っこで連行させて貰う。」
    「……な、ない、です……。 ……あの、まだ、たぶん、平気……です。自分で、歩けます。」
    「そうか。じゃあ後の事は頼んだぞ、3人とも。」
    「はいはい、了解しましたっと。……いつも何て言えばいいのか迷うんだけど、お大事に、でいいのかね。」
    「監督生、体調が悪いのか!? そうか、ゆっくり休んでくれ!」
    「ふな~。まぁ食べ物を恵んでくれた礼くらいは言ってやるんだゾ。お大事に、だ!」
    「あ、ありがとう……、あの、魔法史のノート、よろしくね。」
    「「「まぁ、頑張ってはみる。」」んだゾ。」

    ……これは、それぞれ途切れ途切れになっているパズルのようなノートになるかもしれない。
    そうしたら、トレイン先生に個人的に聞きにいこう、と。
    新たな予定の候補を留めつつ、苦笑いを浮かべながら軽く手を振って、反対側の手は拘束されたまま、食堂を後にする。


    「……お大事に、でいいんだよね?」
    「体調不良には変わりないからいいと思うぞ。友達同士なら気遣いの気持ちが伝われば充分だろ。 な、監督生。やっぱり抱っこするか?」
    「……だ、大丈夫です。トレイ先輩。」
    釘を刺すように確認された言葉が、少しぼんやりしてきた頭に刺激を与える。
    私に合わせていつも以上にゆっくりと歩いているから、とにかくたくさんの人に注目されてしまう。
    けれど、抱っこされた状態はもっと恥ずかしいので、早く、とも言えない。
    彼に看破された事で安心して甘えが出てしまっているのか、お腹が鈍い痛みを訴え始めた。

    *ここまで。
    ※こんな感じでずっと甘やかされるやつ。



    ------------------------------

    【監督生おたおめ話】
    ※トレ監ベース+ALL愛されっぽい話にする予定でしたorです。
    たぶん付き合ってる。

    ***

    【とある日常 NRC内ハーツラビュル寮 トレイと監督生の部屋 夜】


    「今週末の予定はどうなってるんだ?」

    金曜日の夕食後。それぞれ課題や自習の為に机に向かっていると、一段落着いたのか集中が途切れた気配を感じて、いつもの質問を投げかける。

    「んー…と。明日は魔法石の経過観察と調整の日かな。だから部屋に籠もりっきりになると思う。トレイくんは?」
    今は筆記用具として使っているマジカルペンをふに、と小さな唇に当てながら宙を見上げながら答えた後、視線を合わせて笑い掛けられる。
    「俺はサイエンス部の植物の世話とこの課題の続きをするくらいだがー……、…お前はその調整作業だけで1日中部屋に籠もりっぱなしになるのか?いつもは数時間も掛かってないだろ。どこか調子が悪いのか?」
    一月に一度、機械の定期メンテナンスのようなものを行っているのは知っているし、俺には解らないなりに興味深い光景なので、毎回とはいかないまでもこれまで何度か立ち会って見学させて貰ったりもしている。病院の健康診断のような状態の確認がほとんどで、そんなに時間がかかるものではなかったはずだ。
    なのでどこかに異常でもあるのかと心配になってそれを聞けば、違う違うと安心させるように手をぱたぱたと振りながら本人は笑う。

    「明日はちょうど1年間の節目を跨ぐ日だから、総合的に情報の経過と詳細を見て、何か新しい魔法を刻めそうだったらそうしようかなって。ちょうど満月だし、リドルくんに外出許可を貰っておこうかな。その方が作業もし易いんだ。だから夜にちょっと出掛けるけど、心配しないでね。」
    「それなら俺も一緒にー………、……ん?」
    「ん?」
    その説明に引っ掛かるものを感じて片眉を上げれば、小首を傾げてこちらの様子をあどけなく見つめて視線が絡み合う。
    「1年間の節目を跨ぐ日…って、つまりは、お前が産まれた日って事か?」
    「うん。そうだね。魔法石自体は産まれる前から施術されていたものだけど、ひとつの命として呼吸を始めた日っていう意味なら、そうなるね。正式に術式が稼動した日って言えばいいのかな。」
    「いや、お前……、それはつまり、誕生日って、事だろ?」
    そう言葉にすれば、一瞬理解が出来ないとでもいうようにきょとんとした顔をして、すぐにああ、と納得したように笑う。
    「ふふっ。確かにそう、そうだ、誕生日だね。ごめんなさい、解り辛い言い方しちゃって。」
    自分で可笑しそうにくすくすと眉を下げながら何でもない事のように言っているが、こちらからすれば笑い事でも、それこそ『何でもない』事でもない。
    「―――…おま……、お前っ!!」
    「、へっ!?」
    思わずガタッと椅子から立ち上がって両手で細い肩をわしっと掴む。
    目を瞠っていきなり何だろうと混乱しているのがよく解るが、混乱しているのはこちらも同じだ。何で、
    「何で自分の誕生日が近いって教えなかったんだ!馬鹿!!」
    「馬鹿!?」
    ガン、とショックをうけた顔には『何故自分は怒られているのだろう』という気持ちがありありと出ている。コイツは、本当に。
    「あれだけ、散っ々!俺や他の奴らに大仰なお祝いをしておいて、何自分の誕生日を『何でもない日』にしようとしてるんだ!!」
    「え、でも、『何でもない日』のパーティーの予定も入ってないし、寮の規則には違反してな…ぅゅっ!
    「そういうことじゃない!!」
    まるで見当違いな反論が返って来て我慢ならずに鼻を摘まんでやる。ああもう。このやり取りさえ久々に感じる程にこれまで色んな奴のお祝いをしてきた癖に、どうして俺も、他の奴らも、コイツにそれを聞かなかったのか。
    「明後日が誕生日だって、他の誰にも言ってないのかっ?」
    これで俺以外の誰かに言ってたらそれはそれでショックだが、と複雑な感情を抱きながら手を離せば、やはり不服そうな表情をしている。珍しく反抗的な様子だ。
    「…言ってないよ…、お祝いされた事とかなかったから、特に意識もしてなかったし…あくまでも私には成長をおさらいして確認する日、っていう認識だから…。」
    「……故郷の家族、は……、あー……いや、でも、きっとそういう知識自体は持ってたはずだろ?」
    暦も曖昧な環境の中で永く生きている動物にとっては、誕生日を祝う、なんて行事は短命な生き物が行うものだという認識なのかもしれない。
    だけどコイツは人間だ。ヒトの営みのひとつとして、ひとつの勉強として、それに付き合ってやってもいいだろうに。
    そんな俺の苦い思いが表情に出ていたのか、この世間知らずの魔女は、困ったように笑う。
    「その、大切な日ではね、確かに、あるんだよ?新しい教本や杖を貰ったりだとか、いつもは行ったら駄目だって言われてる場所に連れて行ってくれたりだとか、出向く許可をくれたりだとか…、そういう成長の節目となる日に、なる事が多かったし…。確かにこの学園みたいな、特別にすごい何かをする訳じゃないけど……」
    膝の上で手をもじもじと動かして、決して何もないという訳ではなかったという事を、必死になって探しているようだった。
    もうそれこそが、それが何よりの答えだろう。
    「……ご両親は、年毎に何かを遺したりは、して無かったのか?」
    座っている彼女の前に座り込んで、膝の上でまごついている小さな手を包み込む。
    「……そういう時限式のものは、それこそこの魔法石だけかな。まぁ、歳をとる事自体とは、直結しないんだけどね。」
    ふふ。とまた小さく笑う顔には、悲観的なものは浮かんでいない。
    それが彼女の『普通』だったのなら、そういう感情とも無縁で、余計なお世話でもあるのだろう。
    「だから、私の事はね、別に、いいの。……というか、あのサッシュとかを着けて構内を出歩くのは、ちょっと……、と、トレイくんも、解るでしょう?」
    「…………」
    そう。こと自分の誕生日に対しての関心の低さというものは、他の誰でもない俺自身が、彼女に悪い手本の代表みたいなカタチとして既に示してしまっている。後の悪い例といえば、イデアとかもそうだ。そして本人の意思に関わらず、結果的に盛大に担ぎ上げられ駆り出されるという祝われ方も、彼女は既に何度も見ている。
    人に注目される事が苦手な彼女が、これまで通り静かに過ごしたいと思う気持ちも十二分に理解は出来る。
    けど、今は、このナイトレイヴンカレッジの生徒でもあるのだ。

    *ここまで。
    ※こんな感じでてんやわんやするやつ。



    ------------------------------

    【かみなりこわい話】
    ※実際に雷が鳴っている間に執筆するという謎の縛り作品。書きたい部分はほぼ終わっているのであとは最後まとめるだけです。設定とかちょっと分からないと思いますが感じて下さい。
    まだ付き合ってない。

    ***

    【ナイトレイブンカレッジ ハーツラビュル寮 夕刻 廊下】

    雨風が容赦なく窓に叩き付けられ、ガタガタと窓枠を忙しなく揺らしている。
    本来なら日が傾きかけているくらいの明るい時間だが、濃い雨雲に覆われているせいで寮内はかなり薄暗い。そんな中を、自室へと向かって歩いて行く。

    とある日の放課後。
    寮長室で1人仕事をしていたら突然室内が暗くなり、ハーツラビュル寮の敷地内では珍しく突然の夕立に見舞われた。
    それぞれの寮の環境によってこういった気候の変動があったりもするのだが、この寮の敷地は基本的には穏やかな気候である為、校舎のある学園近辺や賢者の島の天気が荒れていたとしても多少影響をうけるくらいで、そちらの気候が寮内にまで強く影響を及ぼすという事は、実に稀な事だった。
    脇に置いていたスマホを取り出して賢者の島の天気予報を確認する。雨雲の動きを画面で上で追っていると、局地的に紫色になっている時がしばしばあった。更には強風・雷雨警報まで出ていたので、それがこちらの方まできているという事だろう。
    それでも数時間後には雨雲のひとつもなく、季節の変わり目の夕立という感じだった。

    と、ピカッと閃光が寮長室を照らしたと感じた直後に、ドォンッ!と地を揺らすくらいの雷鳴が轟いてさすがに少し驚く。
    「……これはまた、随分と突然だな。」
    遠雷の兆しも何もない、間近での落雷。
    恐らく、寮から少し離れた避雷針に落ちたのだろう。この寮自体に落ちるという事はまずないだろうが、寮生達に一斉に業務連絡を送る為のアドレスに『天気が荒れている間は外には出ないように』と一応メッセージを送っておく。
    気にし過ぎだとしても、何かがあってからでは遅い。寮生の安全を気にかける、スマホの扱いにあまりに慣れていない寮長の代わりに、早々に注意喚起をした。
    しばらくして俺個人のアドレスへ『有難う。助かるよ。』と律儀にメッセージが届いて、ふ、と口元が緩む。

    その瞬間、バツン、と今度は機械的な大きな音がして、寮内がやけにシン、となる。
    まだ部屋の照明を付けるような時間ではないが、試しにボタンを押してみると、何の反応も返って来ない。カチカチと何度か繰り返しても、同じだった。
    ―――今度は停電か。
    本当に珍しい。それだけ激しい嵐なのだろうか。
    とは言え、ここは歴史ある魔法士育成学校だ。寮内の全ての動力を電気に頼っているという訳でもない。……まぁ、パソコンとかを使っていた生徒には気の毒だが。
    陽も落ちきっていないし、しばらく様子を見よう。という旨をまた寮生達に連絡して、またリドルから礼のメッセージが届く。
    本当に律儀だな、と1人でくく、と笑っていると、そういえば同じく律儀な性格のルームメイトはどうしているだろうとふと思い出して、『色々と荒れてるけど、大丈夫か?』とメッセージを送る。

    天気が荒れても雷が鳴っても特に気に留めていなかったのは、彼女自身が常日頃から雷と縁深いからである。俺としては不服な事ではあるが、近くでの落雷を頻繁に目にしている彼女にとって、建物の外の雷なんて何て事はないだろう。
    そうは思いつつも、停電という経験は初めてか、と少し心配になりつつ返事を待ったが、既読の知らせも一向につく様子がない。
    彼女は既に帰寮して部屋にいるはずだ。またスマホをマナーモードにした状態で何かに集中して気付いていないのだろうか。
    「………」
    電話をかけてみても、出ない。
    「…………。」
    スマホを耳に当てたまま片手でメモを取り、『ここまで終わった』と書いた付箋を書類の束に挟んで席を立つ。元々そんなに時間がかかるものでもないからと制服のままここに立ち寄って作業をしていたので、スツールの上に置いていた鞄を持った辺りで一向に応答の無いコール音をタップして止めた。
    「……………―――。」
    努めて冷静に、寮長室を出て鍵を閉める。その際にキーウォレットにある自室の鍵を見て、そういえばあの部屋のセキュリティシステムの動力源は電気だったなと思い出しつつ、少しだけ早く歩いて、部屋へと向かう。
    イデアの事だ、非常や予備電源の備えくらいはしてあるだろうと考えつつも、あの物騒な機能が作動するには相当な電力が必要になるはず、と思考があちらこちらへと忙しなく移動する。
    皆部屋に篭もっているのか、人気のない廊下を進むにつれて、昔の事を思い出す。
    一向に回復しない窓の外の天候を気に掛けながら、焦燥感に駆られていたあの日。
    彼女は独りで、ずっと俺を待っていた。
    楽しそうに歌を紡ぎながら、不安になっていた俺を導いてくれた。
    階段を一度に2段程跨いで上りながら、そんな昔の事を次々に思い出す。その記憶の先に辿り前に、部屋のドアの前に辿り着いた。
    何故だかどこか安心する感覚に陥りながら、扉をノックするが、何の反応も返って来ない。
    ドアのすぐ横にある液晶パネルには何の表示もされておらず、これは後で抗議をしなくてはと考えつつジャラリと鍵を取り出して、やや乱暴に鍵と扉を開ける。
    「【監督生】っ!」
    自動的に閉まる扉を後にしてその場に鞄を落とすと、足早に部屋の奥へと進む。
    寮長室や廊下と同じで、窓が風雨でガタガタと揺れて、薄暗い。
    部屋の内部の音が外に漏れることはないが、外の音は普通に部屋にも届くようになっている。それこそ、有事の際に気付くのが遅れてしまわない為にだ。
    部屋の中は丁度南向きの窓に大粒の雨が激しく打ち付けられていて、五月蝿いくらいだった。
    それでも少し張った俺の声が聞こえないという事はないと思うのだが、と入り口からは死角になっているベッドの方へと目を向ければ、カーテンが降ろされて遮られていた。
    「……【監督生】?」
    寝ている可能性も考えて少し控えめに声をかける。
    やはり何の反応もないので、そっとベッドの中央部のカーテンが重なっている部分を開けて中を覗き込むと、ヘッドボートに背中を預けて座り込んでいた彼女の小さな身体がビクッっと大きく跳ねた。
    ……どこかで似たようなものを見たような気がするが、体育座りをしていた彼女のスカートの中がしっかりと見えてしまった事により、俺の記憶は白く覆われ彼方へと消え去った。
    「~~~っ…、と、とれぃ、くんっ……」
    跳ねた際にぽとりとクローバー型のクッションが落ちて、それでも両手で枕を強くぎゅっと握っている。
    俺の名前を呼ぶ声は震えて掠れていて、予想していたものとは違う様子に思わず戸惑う。
    「だ、大丈夫か?」
    軽くカーテンを開いて彼女のすぐ近くに腰かけながら声をかけると、彼女は一瞬きょとんとした後、「ぁ、」と小さく声を上げてきゅ、と両目を瞑る。それと同時にふわりと、顔のサイドの髪が軽く靡くのが見えて、再び目を開けて目が合うと照れ臭そうにふにゃりと笑った。
    「……ごめんなさい、音を遮断する魔法、使ってて……おかえりなさい、トレイくん。えと、今、何て言ったの?」
    「ああ、いや。大丈夫かって聞いただけだよ。ただいま。」
    深い理由までは解らないなりにとにかく安心させてやろうと、靴を脱ぐ為に軽く前のめりになると、またピカッと鋭い光が部屋を満たす。
    「っ!!!」
    同時にむぎゅっ、と。背中に柔らかいものが勢い良く衝突してきた。
    次いでピシャッ!ゴロゴロゴロ…ッと典型的な音が部屋を揺らすと衝突した際に前に飛び出していた細い腕がぎゅっ、と俺の首を絞める。
    「ぐっ。…っな、なんだなんだ。そんなに怖いか?」
    靴を脱いで上半身を起こせば、彼女の首締めもどうという事はない。
    少しからかう様な口調で笑って背中を振り返れば、俯きがちな彼女の大きな瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちて目を瞠る。

    「こわい……」

    涙と共にぽつりと零れ落ちた言葉は酷く弱々しい。
    「っ、そうか。笑ったりしてごめんな。ほら、おいで。」
    やんわりと彼女の拘束を外してベッドに乗り上げると、脇を抱えて軽い身体を持ち上げて、座っている自分を跨ぐようして密着する。
    ……正直この体勢は密着する範囲が多くてあまりしたくはないのだが、反面、彼女が一番安心する事も知っているので、今ばかりは色々と気を張るしかない。
    案の定、背中に回った手がきゅ、と俺のブレザーを掴んで、軽く鼻をすすりながら頭から太腿の辺りまで、なるべく多くの面積で触れていたいとばかりに柔らかい身体を寄せてくる。ああ。実に心臓と理性に悪い。
    「……雷なんて、しょっちゅうお前の周りで落ちてるから大丈夫かと思ってたんだが……。そうだお前、スマホはどうした?」
    緩く腰に手を回しつつ頭を撫でながら可愛いつむじに向かって話かければ、うり、と頭が動いて「スマホ…は、たぶん、鞄の中…。」と、それを言えば俺に叱られる事を解っている様な様子で小さく呟かれる。
    …まぁ、その自覚があるのなら今はそれについては言及するのはやめておこう。
    それだけ余裕が無かったんだろう。
    「そんなに怖かったなら、今度からは俺にすぐ連絡するんだぞ?いいな?」
    「……でもトレイくん、忙しい、のに……」
    「その辺りはいつも気にするなって言ってるだろ。お前より優先させる用事なんて無いんだから。」
    「………うん…ありがとう……」
    もうこれ以上密着する面積は増えないというのに、更にぎゅぅ、と抱き締められる。
    必然的に柔らかいものが更に圧迫されているのが分かって、苦しくないのだろうかと心配する体を装って思考を霧散させた。
    「……雷、本当は苦手なのか?」
    「……苦手、みたい。……その…魔力の籠められた魔法の雷と、自然現象の雷は全然違うから、いつ落ちるかとか、全然予測がつかなくて…。…ほら、私が住んでいた森は、基本的に天気が酷く荒れたりは、しないから……こんなに、怖いものだったなんて……。」
    「……成程な。……なら、これからもそういう事があった時には、すぐに連絡をくれよ?お前を部屋で独りで怯えさせてたなんて、色んな奴らから怒られそうだ。」
    「……?何でトレイくんが、怒―――っっ!!!」
    カーテンの隙間からまたビカッと強い光が走ると、腕の中の小さな身体がビクッと跳ねた。次いで雷鳴が轟くのと共に小さく震えているのが伝わってきて、安心させるようにぎゅ、と包み込むように抱き締めてやる。
    「ごめんな。カーテン、閉めておくから。」
    少しだけ手を離してシャッと荒々しくカーテンを閉めて隙間をなくす。
    ただでさえ薄暗い室内の中、ベッドのカーテンで更に光を閉ざしてしまうと、ほぼ夜闇に近い暗さになった。
    ……何となく、彼女を狭い密室に連れ込んでいるような気分になって、ぐ、と息が詰まる。お互いに制服だし、外は分かりやすく荒れていて、正直なかなかクるものがある状況だ。
    また両手で抱き締めてやるのに少し戸惑っていると、声にならないくらいの小さなぐずったような呻きが聞こえて、ぐりぐりと頭を押し付けられる。『抱き締めろ』という事だろう。
    歳の離れた下の妹弟達を思い出して、思わずふ、と笑いが零れる。
    「大丈夫だ。俺は傍にいるからな。独りで怖いの耐えて、えらかったな。いいこだ。」
    ぽんぽん、と背中を優しく叩いて、頭全体を覆うように腕を巻き付けながら髪を撫でてやる。
    そのついでに、子供を寝かし付けるルーティンの延長上で、抱き締めたまま身体をついゆらゆらと前後に揺らしてしまった。
    「っ、っ?」
    すると突然の動きの変化についていけなかったのか、抱き締められていた手が少し緩んで、不思議そうに、きょとんとした顔で見上げられる。
    「……あー、悪い。びっくりしたか?」
    「……う、ううん。初めてしてくれる動きだから、何かあるのかなと思っ…!!!」
    厚みのある生地で遮光効果があるといっても完全なものではないではない為、カーテンの波の薄い部分からはどうしても閃光が透けて見えてしまう。
    再び顔を俺の胸元に埋めて、ぅー、と小さく声をあげるつむじを見下ろして、本人は申し訳ないのだが可愛いなぁ、と思ってしまった。

    *ここまで。
    ※付き合う前までの先輩は常に理性と戦っています。



    ------------------------------

    【先輩おたおめ話】
    ※プレゼント何にするか困るよねこの人と思っていたらバースデー3年目当日エピで「こ、コイツ……!!」ってなったなーと今思います。

    ***

    「ねぇトレイくん、やっぱり欲しいもの、思いつかない?」

    くいくい、とブレザーの袖を引きながら、見上げてくる大きな瞳の中に俺の姿が映る。

    「そう何回も言われてもなぁ。お前がくれるものなら何だって嬉しいよ。」
    「…じゃあ、真っ黒焦げのクッキーとかでもいい?ハートの形だったけど、砕けちゃったようなやつ。バラバラになった消し炭みたいなやつ。」
    「いいぞ。」
    「もー!!」

    ぽすんっ、と小さな拳が俺の脇腹を叩く。
    全部本心なんだけどなぁ。と困ったように笑えば、彼女もそれを承知している様子で困り果てた顔をしていた。

    彼女が一体何に困っているのかと言えば、言うまでもない。
    10月下旬に迫る、俺への誕生日プレゼントの事だった。

    元々皆でケーキを作ってくれるという事は既に決定しているらしく、俺としてはそれだけでも充分なのだが、『大切な人に何かを贈りたい』と想う気持ちもまぁ、もちろん理解は出来るのだ。

    だが、俺はもうきっと、人生でこれ以上欲しいものは無い、というものを既に貰ってしまっている。…いや、これからも貰い続けるつもりでいるので、本当に欲しいものが無いのだ。
    紆余曲折あって、一般的な道筋とは程遠い、何とも奇天烈な段階を経て漸く、漸くめでたく『お付き合い』する事になったのが、しばらく前。
    その後もまぁ、これまで散々我慢して来たものを、それでも精一杯、少しずつ小出しにして、あくまでも優しく、少しずつ教えて、触れ合って、『そういう』関係にも至っている。
    なので今はもう何というか、心身ともに幸せの絶頂にいると言っても過言ではない。
    あまり思い出すと今の状況的によろしくないので、詳しくは言わないが。

    …その辺りに関して言えば、欲しいものとか、して欲しい事とかの希望は数え切れない程あるのだが(これまで我慢した分貯まってるのは仕方無いだろう)、付き合ってすぐの誕生日プレゼントにそれもどうなんだろうな、という葛藤もある。
    俺が逆の立場だったら、やっぱり何かアクセサリーとか、何か形に残るものがいいかなとは思うし。

    しかし俺は装飾品の類に関しては帽子くらいにしか興味が無いし、料理や実験の際の事を考えると手の辺りに着けるアクセサリーも汚したり失くしてしまったりしそうで怖い。眼鏡ですら時々行方不明になるというのに。
    首元に何かを着けるのも好きじゃないし、全寮制であるこの学院にいる間は、服飾関係のものは貰っても着ける機会自体が少ないのだ。
    それにまだ成長期である以上、サイズが合わなくなる可能性もあるし。

    彼女に限らず、他の寮生や同級生達にも何か欲しいものは無いかと聞かれるが、それも品物、というよりは、何かしらの手伝いとか、そういった行動的な願いを口に出している。
    まぁ、こちらからすると全部冗談のつもりで言っていても、何故かみんな毎回悩んだ後に了承されてしまう事が多く、結局自分の方から冗談だといちいち補正を入れないといけなくなるんだが。実際それらが全部叶ってしまえば、身の回りのことを全部他の奴にやらせる副寮長みたいな事になってしまう。
    隣のこいつも俺と同じくらい暇になるんだったら、それはそれで…まぁ、いいんだが。
    本人はやりたい事が常に沢山あって忙しない学園生活を送っているので、その辺りのバランスがとれないし、結局、俺自身も多少忙しいくらいが丁度いいのだ。

    …やはり何か、『行動』のリクエストでもしてみようか。
    という邪な想いと理性を頭の中で戦わせていると、彼女はじっとこっちを見上げて、目を細めつつ何かを探ろうとしていた。
    まさか思考を読んでるんじゃないだろうな、と思いながら、念の為に確認しておく。
    もしこれで本当に心の内を読まれていたら、そのままそれをリクエストしてしまっても、それはそれでいい、という受動的な賭けに出た。
    「……俺が今考えてる事、分かるか?」
    「トレイくんがそのまま口に出してくれれば、分かるよ。」
    「……悪いが、今ずっと考え中だ。けど本当に、あまり悩み過ぎなくてもいいからな。他の奴らみたいに、祝いの歌や子守唄を歌ってくれるとかでも充分嬉しいし。」
    「歌、かぁ…」
    この場合、その賭けに負けた、と言うべきなのか。
    ぽつりと呟きながら、うーんとまた考え始めてしまった。

    *ここまで。
    ※ちなみにこの話2020年に書き始めて放置されているのですが、結果誕プレはイグニハイド寮全協力のもと、プロジェクションマッピング他フル活用の会場に観客♣一人の中、マクロスFの「虹色クマクマ」を、その後ふたりきりの時に「アナタノオト」を歌われて真っ赤になる感じでしたorです。

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    おわり!
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