知恵の主との語らい 都合のいい夢を見た。兄がいて相棒がいて、彼がいる夢。幸せに、この世界で暮らしている夢。
「……それはあなたが潜在的にそう願っているからではないかしら?」
ナヒーダ、いる? と訪ねたスラサタンナ聖処。快く出迎えてくれたナヒーダに今朝見た夢の話をすれば、彼女からはシンプルな答えが返ってくる。
その通り。夢には願いが現れる。ならば、家族と恋人とテイワットで暮らす夢は私の願いなのだろう。
「素敵な夢、素敵な願いだわ。あなたの旅の事情は知っているけれど、私はその願いが叶うことを祈りたい」
柔らかく微笑むナヒーダに、蛍は感謝の言葉を声に乗せた。しかし憂う表情は変わらないままだ。ナヒーダがティーカップを傾けてソーサーに戻し、もう一度蛍を見上げても彼女は口を開かない。
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