恋人になりたい男となりたくない男しまったと思った瞬間にはもう遅かった。こちらを見据える青い瞳は、確かに怒りを滲ませている。
怒らせてしまった。クリスは自分の失言に思わずため息を吐きそうになったが、火に油を注ぐ前になんとか飲み込んだ。
「つまり、お前は恋人でもない男と会うたびに寝てるのか」
「そういう意味で言ったんじゃない」
レオンの言い草は心外だが、クリスの伝え方では突き詰めればそういうことになってしまう。
お互いもう中年の男で、関係を始める前に改めて告白し合ったわけでもないが、クリスはなんの抵抗も無く簡単に他人と(同性となれば尚更)関係を持てる性格ではないし、レオンとて戯れに男に手を出すような趣味は持ち合わせていない。お互いにとって特別な相手だということに間違いはないはずだし、レオンに至っては恋人同士の自然な流れだと認識していた。
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