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    snhk2501

    @snhk2501
    怪文書書くよ。捏造に次ぐ捏造なのでなんでも許せる人向け。
    最近(2022年年末ごろから)はバイクの弟と馬の兄貴のコンビにやられてそっちに突っ走りがち。
    无限&小黑の師弟の擬似親子に萌えてたのですが、
    藍渓鎮にて北河がダークホース過ぎて北河+无限沼に浸ってます。

    北河の口調が字幕組さんの翻訳を基にしているため、5/27発売の日本語翻訳版藍渓鎮での口調と異なりますことご容赦ください。
    タグ「Remedium」は今のところ无限に纏わる設定が共通してる連作です。

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    snhk2501

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    ⑤小黑と无限のやりとりに北河が見たもの。
    連作の続き。
    (最初)①→https://poipiku.com/1040394/3778723.html
    (これの前)④→ https://poipiku.com/1040394/4467496.html

    ##Remedium

    Remedium⑤ 北河は右手で、未だ意識の戻らない无限の脈を取りながら、左手で彼の額に触れた。目を閉じて意識の焦点を合わせ、无限の霊域の状態を診る。特に異常は無さそうだ。
     无限が瀕死の重傷を負い、この施療所に転送されてきてから、四日が経とうとしていた。彼の弟子、小黑は施療所の奥からつながる北河の家の庭へ、聚霊と稽古のために朝食後から出ている。気丈に振る舞う小さな彼の姿が痛ましかった。
    ──そもそろ、目を覚ましてもおかしくないんだけどな……。
     无限はまだ意識が戻るほど体力が回復していない、ということだろう。だが、意識不明の状態が長く続けば、いくら彼でも衰弱してしまう。それはできるだけ避けたい。
     北河は点滴の針を无限の腕に刺すと、クレンメを操作して薬液の流速を調節した。
    ──気長に待つしかないが……これでも、何もできないよりはマシか……
     点滴筒の中を、薬液の滴が落ちていった。

     北河が病室の作業机の上を片付けてふと見ると、无限がぼんやりと目を開けていた。
    「无限、俺がわかるか」
     彼の意識の状態を確かめるため、北河は无限の手を握り静かに問いかけた。
    「………北…河……」
     吐息のような、小さな掠れ声が彼の乾いた唇から漏れた。沙青の目が、朧げな光を灯し、北河の方を見る。握ったその手の中で无限の指が動き、北河の手をゆるく握り返した。
    「わかるんだな、よかった」
     北河は安堵に微笑んだ。
     はく、と无限の口が動いた。声が上手く出ないらしい。喉が渇いているからだろう。
    「水は飲めそうか?」
     北河が問うと小さく无限が頷いた。彼の上体を支えて起こしてやり、吸飲みの水を噎せないように、少しずつ口に含ませる。こくん、と无限の喉が動いた。
    「……小、黑…は……?」
     寝台に再び横になった无限が、気遣わしげに北河に問う。
    「俺の家の庭で稽古してる」
     呼んでこようか、と北河が応えると、无限は首を振った。
    「……もう…気づい、てる……はず」
     鞠のように跳ねて袖机から枕元に飛び乗ってきた小さな存在──黑咻というらしい──を見遣り、彼が微笑む。黑咻が大きな目を瞬かせた。
     とたとたと、走るような軽い足音がこちらに近づいてくる。音のした方へ北河が振り返ると、病室の入り口から小黑がこちらを覗いていた。
    「師父……?」
     涙を溜めた彼の翠緑の目が、見開かれていた。
    「……小黑」
    「師父!!」
     弱々しい掠れ声で无限が小黑を呼ぶと、小黑は師の横たわる寝台に駆け寄っていく。
     小黑が无限に飛びつく直前、北河は小黑の肩に触れ、やんわりと彼を制した。飛びついてきた小黑を受け止めるだけの力は、意識が戻ったばかりの、今の无限にはないのだ。
    「気持ちはわかるが、そっとな」
     北河の言葉に小黑が頷いたのを見て、北河は手を離した。
    「……おいで」
     无限に招かれるまま、小黑は寝台によじ登り、彼の肩に縋り付いた。小黑の肩を、无限が優しくさする。
    「……っ…よかった、師父──」
     あとは、もう言葉になっていなかった。小黑は堰を切ったように声を上げて泣き出した。あの夜からずっと堪えていたのだろう。
    「……すまな、かった」
     无限が優しく小黑の頭を抱えるようにして撫でる。
    ──お前、そんな顔できたんだな。
     无限のその表情は、北河が見たことのない、穏やかで、やわらかな笑みだった。自分は知らないが、遠い昔、"あの子"に向けていたものときっと同じだろう。かつて喪ったそれを彼なりに取り戻したのだと北河には思えた。
    ──その子といられて、良かったな、无限。
     北河は静かに笑った。北河の癒せない无限の傷の痛みは、小黑との関係の中でゆっくりと、少しずつ和らいでいっているようだった。心の傷は、そう簡単に癒えるものではない。傷を抱えた本人が、どう向き合い、付き合い、折り合いをつけていくか、それ次第だ。

    「……小黑?」
     无限が静かになった弟子の様子を窺うように首を傾げる。小黑は泣き疲れたのか、无限に縋り付いたまま寝入ってしまった。
    「……寝ちまったな。疲れてるんだと思う。お前が寝てる間、結構な無茶もしてたから」
     北河は小黑の背をそっとさすった。
    「小黑な、お前が大怪我する羽目になった事件について、館から聴取を受けたんだよ。それで、その証言のおかげで犯人グループの残党が捕まったそうだ」
     昨日逸風から受けた報告を、无限に伝える。彼は静かに頷いた。
    「……そうか」
     北河は无限の身体に負荷がかからぬよう、眠っている小黑の頭の下にクッションをそっと入れた。
    「褒めるかどうかは、お前に任せるよ。あの時、かなり無理してたから」
     証言が犯人捕縛につながった事は、小黑の手柄ではある。だが、心身に極端に負荷がかかることを、北河は小黑にして欲しくなかった。彼はまだ、ほんの子供だ。
    「体勢それで大丈夫か」
     无限の様子を北河が窺う。
    「ああ。それに……この方が、いいだろう」
     頷いた无限の目線の先には、彼の病衣の胸元を握る愛弟子の手があった。
     小黑を抱えたまま、无限はうとうとし始めた。目を閉じては、弾かれたように目を開ける。見かねた北河は二人に布団をかけなおし、そっと无限の目元を覆った。
    「眠いなら寝ちまえ。まだ起きてるだけの力がないんだろ」
    「ありがとう……そうする」
     呟くようにそれだけ言うと、あっという間に彼は眠りに落ちていった。
     それを見届けると、北河は自宅を通じて出た先、山あいの街にある診療所へと向かった。開院時間に遅刻しかねない時間だが、少し急げばまだ間に合う。それよりも、気がかりが少し減ったことが、北河の足取りを軽くしていた。



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