Remedium⑤ 北河は右手で、未だ意識の戻らない无限の脈を取りながら、左手で彼の額に触れた。目を閉じて意識の焦点を合わせ、无限の霊域の状態を診る。特に異常は無さそうだ。
无限が瀕死の重傷を負い、この施療所に転送されてきてから、四日が経とうとしていた。彼の弟子、小黑は施療所の奥からつながる北河の家の庭へ、聚霊と稽古のために朝食後から出ている。気丈に振る舞う小さな彼の姿が痛ましかった。
──そもそろ、目を覚ましてもおかしくないんだけどな……。
无限はまだ意識が戻るほど体力が回復していない、ということだろう。だが、意識不明の状態が長く続けば、いくら彼でも衰弱してしまう。それはできるだけ避けたい。
北河は点滴の針を无限の腕に刺すと、クレンメを操作して薬液の流速を調節した。
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