kiss me それは一つの呪いだった。一つから分かたれて街に広がった呪いは、無差別に人に取り付いた。
額に現れた呪印は、呪いの親切さの現れだった。誰が呪われたのかをわかりやすく示し、すぐにその場を離れそして呪われたものの末路を見届けろという、その親切さの。
全力で解呪方法を調べられてはいたが、まだ答えは出ていない。
額に現れた呪印にはもう一つ親切にも、カウントダウン表示まである。一つ一つ消えていく文様が最期の一つが消えた時、呪いを受けたものは四散する。
「墓の下で君を待つよ」
額に呪印を宿したスティーブンはそう笑うと、傍で青褪めていた恋人の腕を離し立ち上がった。
呪印の文様はもう残り一つ。スティーブンが地上から消え去るまでは数えるほどしか時間は残っていない。
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