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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    TLに花見するチェズモクが流れてきて羨ましくなったので書きました。

    #チェズモク
    chesmok
    ##BOND

    ■夜桜で一杯


     新しく拠点を移した国では今が桜の花盛りだそうだ。それを朝のニュースで知ったモクマは「花見をしよう」と期待たっぷりに朝食を作るチェズレイに笑いかけた。
     日が沈んでからモクマはチェズレイを外へ連れ出した。桜が満開の公園へ行くと、ライトアップされた夜桜を楽しむカップルや友人連れの姿がちらほら見える。一箇所、満開の桜の下が空いていたので、そこにビニールシートを広げて二人で座る。持ってきたどぶろくの一升瓶からぐい呑みに注ぐとモクマはチェズレイに渡す。続けて自分の分もぐい呑みに注ぐと、二人で乾杯した。
    「や~、マイカから離れてまた桜が見られるとは思ってなかったよ」
    「それはそれは。タイミングがよかったですね」
     モクマがいつにも増して上機嫌なので、チェズレイも嬉しくなってしまう。
    「おじさん運がなくてさ。二十年あちこち放浪してたけど、その間に桜の花なんて一回も見られなかったんだよね」
     でもそれもこれも全部、なんもかも自分が悪いって思ってた――そう小さな声で呟いてぐっと杯を干す。
     このひとはどれだけの苦しみを抱えて二十年も生きてきたんだろう。事あるごとに何度も繰り返した問い。それをまた思うとチェズレイは胸が詰まった。ああ、何度繰り返しても同じだ。苦しい。
    「……モクマさん」
    「あぁ、でも今はお前さんと二人で花見ができて嬉しいよ。どうにか死なずに生きてた甲斐があるってもんだ」
     そう言ってモクマは頭の上の桜の花を振り仰ぐ。
    「よく言うじゃないか。長生きはするもんだって。お前さんと二人で過ごすようになってから、それを実感してる」
     からりとモクマは晴れやかに笑う。たぶんそれが苦しんだ末に見つけた答えなのだろうと、チェズレイは腑に落ちる思いがした。同時に、いま自分はこのひとの隣にいることが出来て、これ以上なく幸せだと噛みしめる。
     そこで桜の花びらがひとひら、チェズレイのぐい呑みの中へ舞い落ちてきた。白く濁る酒の水面に、ほのかに色づいた花びらがたゆたう。それを見てモクマが囃し立てる。
    「おっ、風流だねぇ。お前さん、ついてるよ」
     それをじっと見つめたチェズレイは、しばし無言で考え込んだ後に桜の花びらごとどぶろくを一気に飲んだ。ごくりと喉が鳴る。それが意外な行動だったようで、モクマは一瞬あっけにとられる。
    「チェズレイ……」
    「毒を食らわば皿まで、ですよ」
     ねェ、モクマさん。チェズレイはモクマに流し目を向ける。左目の花が微笑みにたわむと、つられるようにモクマも目を細めた。
    「――桜は綺麗だけど、やっぱりお前さんと比べると霞むなぁ」
    「それは光栄です」
     もう一杯いただけますか、とチェズレイがぐい呑みを差し出せば、モクマは黙ってどぶろくを注ぐ。ずっとこのまま、二人この時間の中で過ごしたかった。
     でもいつかは夜は明けるし桜だって散ってしまう。だからこそ、生きるということは尊くて美しいのだ。チェズレイは小さく酒精の混じった吐息をつく。
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