ナイトウォーク 後編 炭酸水を買いに行く悠仁について行った七海ははじめ、悠仁は少し歩いた先にあるコンビニに行くものだと思っていた。しかし目的地と思い込んでいたコンビニを悠仁が完全にスルーしたので、「どこへ行くんですか?」と今さらながら行く先を確認する。
「サンエーだけど?」
悠仁はコンビニを通り越して少し歩いた先のローカルスーパーを指差した。沖縄県内ではショッピングモールや飲食店をいくつも運営するかなり大きな会社で、食品館なら県内の至るところで見かけるほど店舗の多い有名なスーパーだ。
「炭酸水を買うだけなら、コンビニでいいんじゃないですか」
「だってスーパーのが安いじゃん」
たしかに悠仁のいうとおりだ。しかし七海は知っている。サンエーは、寒い。空調がおそろしいほど低く設定されているので、店内を少し歩くだけで身体が冷えてしょうがない。ただでさえ風が吹きすさぶ夜道を歩いているのに、まるで冷蔵庫のように冷たい店内を想像して、七海は身震いした。もしや悠仁が外出前にいっていた「寒いよ」にはこれも含まれていたのだろうか。それならそうといってほしかったが、七海は七海で行き先を聞かなかったので、どちらか一方が悪いという話でもない。七海はせめて悠仁の手から伝わる熱を逃がさないよう、繋いだ手を隙間なくくっつけた。サンエーに入店してからがほんとうの勝負だ。
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