シロヤシャとタナ杉(成長済み)を、〜しないと出られない部屋に入れる(高銀)「セックスしないと出られない部屋」
銀時が気だるげにそう書かれたプレートを読み上げる。どういうわけか、目の前にいるのは高杉で、しかもただの高杉ではない。今より10年ほど前の、総督時代の高杉である。当たり見回すと扉のない真っ白な部屋で、なぜか布団だけが用意されている。
なんの因果か誰の悪ふざけかは知らないが、めんどくせぇなと、銀時は頭をかいた。
「高杉くん高杉くん手出して」
「あ?」
若い高杉は未だに状況を上手く呑み込めていないようで、目の前の銀時に対して警戒心を露わにしている。
「いいから。はやく」
銀時はいいながら高杉の手を強引に取ると、指を絡める。そのままスリスリと擦り合わせたり、握ったりと、情事を思わせるような仕草に、初心な高杉の頬に朱が走る。それを見計らい、銀時はその手の甲にチュッと口付け、
「はい、手セックス〜」
と宣言するように言うと、ガチャリとドアが開いた。
「お、開いた。ガバガバ判定で助かったわ」
銀時は手をパッと話すと、呆然とする高杉を置いて開いた扉に向かう。
慌てて若い高杉がその後ろを追いかければ、待合室のようなソファーとテーブルが置かれた空間に出た。
向かい側には同じような扉があり「高杉様、白夜叉様一行」と書かれたプレートが下がっている。
「まあ、向こうもすぐに出てくるだろ」
銀時はよっこらせとソファーに腰を下ろす。高杉も、黙ってその横に座った。
特に話すことも無く、時計の秒針の音だけが静かな待合室に流れる。
「……あのさ」
銀時が苛立たしげに言葉を発した。
「なんか、向こうの部屋開くの遅くね?」
「……」
「これ、もしかして向こうガチでセックスしてんじゃねぇの?」
「……」
「なんか、喘ぎ声みたいなの聞こえてくるんだけど……」
「……」
「え?なに?どういうこと?ガチでしてんの?あいつ、はあ!?」
銀時がキレたのと同時に、ガチャリと音が鳴り扉が開いた。
しばらくして、一戦終えたように満足気な顔の高杉が、俯いためまの若い銀時の肩を抱いて出てくる。
「銀時!」
若い高杉が銀時に駆け寄ると、大人の自分から奪い返すようにして、引き剥がす。
「おい、大丈夫か!あいつに何された!」
「べ、別に大したことされてねーし」
いいながらも、若い銀時はどこか尻を気にしたように、身動ぎしながら、しきりに襟元を直している。目元は赤く腫れ、涙のあとが残っており、濃厚な事後の気配を漂わせていた。若い高杉が硬直する一方で、銀時はやけに機嫌のいい高杉を締め上げていた。
「おいコラ浮気か遅漏野郎。随分とねっとりじっくり楽しんでたみたいじゃねーかよ、ああん?」
「そういうテメェらは随分と早漏だったらしいな」
「シバキ回すぞコラ!」
「安心しろよ、ちんこは挿れてねぇ」
「じゃあ他のものは挿れたってのか!ああ!?」
「なんだ妬いてんのか?若い頃のテメェもなかなかどうしてウブで可愛かったが、今のお前もなかなか可愛げが残ってるじゃねェか」
「ちんこ切り落としてやろうかテメェ」
「そんなカッカすんじゃねぇよ。……おい、若い俺」
「ああ!?」
若い高杉が声を荒らげながら、十年後の自分を睨みつける。我ながら幼い様子に、高杉はククッと喉を鳴らして笑う。
「年の功で教えてやるよ。セックスってのは、挿れて擦るだけじゃねェんだよ」
言いながら高杉が見せつけるように指をクイッと曲げ、舌をべっと出した。途端に、何かを思い出したようにボッと十代の銀時の顔が茹でタコのように真っ赤に染まるものだから、若い高杉の顔が般若になる。
「ずっとなぁ、悪いとは思ってたんだぜ? この頃の俺ァ、セックス覚えたてのガキでよ。アホみてぇに腰振って中擦って、出して、はい終わり、だったからな。そんなんじゃあ、満足できねぇよなァ、銀時。今夜にでもそいつに教えてやりな。どこをどうしてもらうのが好みかって。〝俺〟が思っている以上に、テメェが奥の奥までしっぽり可愛がってもらわないと満足できない、いやらしい体だってことをよ」
「なっ、ば、ばか……!」
「そういや、随分と気持ちよさそうにトんでたが、俺にどこをどうねぶられたか、ちゃんと覚えてるか?触られるだけじゃなくて、舐められるのも好きだって、ちゃんと言わなきゃ駄目だぜ?」
「あっ……う、ああ……、ううっ」
若い銀時の顔がこれ以上なく赤くなり、目に涙を溜めながらぷるぷると震え始める。
「殺す!未来の俺だろうが知るか!テメェは殺す!」
「おう!殺してやれ!いたいけな俺にナニしやがった!未成年に手を出してんじゃねぇぞ三十路の助平親父が!ロリコンの上司はショタコンか下衆野郎!」
「じゃれんなよ、銀時。テメェは後でちゃんとちんこ入れて腰が抜けるほど抱いてやからよ」
「ほんとに殺すぞ!」
やんやんやと騒いでいる最中に、高杉は唐突に目を覚ました。
思わず布団を蹴りあげて身を起こせば、そこはすきま風が吹く古寺だった。
攘夷戦争の最中だ。壁と障子があるだけでもありがたいなか、布団まで宛てがわれて、気分よく銀時を連れ込んだことを思い出す。
「た、たかすぎ……」
吐息のような震える声に顔を上げれば、先程まで情を交わし合い、眠りについていたはずの銀時が、高杉に熱い視線を送っていた。
「銀時?」
「あ、あの……俺……」
銀時が、事後に高杉が着せた寝着を、自らはだける。高杉が思わず目を見開く。
「もっとお前に……さ、触って欲しいところがあって……」
銀時が高杉の体に寄り添う。高杉はさっきまで見ていた不愉快な夢のことも忘れて、熱にうなされたように、その肌に手を伸ばした。