宿として時々訪れる、東京にある慣れたビジネスホテルの一室。
マントと上着をハンガーにかけて、時計を見る。まだ日付が変わるにはいくらかある。眠るには早いが、あてもなく外出するには少々遅い。
そしてまだ、同室の男が戻ってきていない。
今回、上京する用件は二つあった。昼間の予定は二人とも共通で、村から転院していった患者の様子を確認すること。
夜は別の用事で、一人は大垣に頼まれた会食に。富永は、大学の同期同士の結婚祝いに参加する予定だった。式は遠方だから参加できない者も多く、同期が集まる飲み会が祝いの場になるという。
富永は嬉しそうに出掛けて行った。何時になるかは分からない、と言いながら。
あの調子ならば遅くなりそうだが、とはいえ、帰っては来るだろう。
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