milk tread 左馬刻の家を訪ねた理鶯は鉢合わせした先客に目を丸くした。今日はゲストがいるとは聞いていたが、まさかそれが猫だったとは。
「…美しい猫だな」
「だろ。オヤジの…ああ、まぁ俺様はオヤジから預かったんだからオヤジんトコの猫でいいか…」
どうやら火貂退紅ゆかりの猫らしい。それは丁重にもてなさなければならない。理鶯は森に住んでいて動物と触れ合う…もとい、動物を相手にすることには慣れているがあまり寄ってこられることはなかった。
「小官がいては落ち着かないのではないか」
「あぁ? そんなタマかよ。堂々としてるわ。よかったなぁ、お前は具材にはなんねーってよ」
そう言って左馬刻は猫を撫でる。白くふわふわとした毛並みの猫はふさふさの尻尾を優雅に立てて我が物顔で歩き、それからソファーに座った理鶯の膝に掴まって乗り上げると胸元に顔を擦り寄せた。
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