浮橋すぱーんすぱーんとリズム良い音を立ててバトミントンの羽が空を切る。美しく長い髪をひらりひらりと軽やかにはためかせて打ち返されたシャトルを難なく受け止め柔らかな弧を描いて対戦相手の元へ戻す。五虎退はそれをあわあわとした風情で受け止めはしても足取りは確実で無駄が無い。そこは歴戦の猛者なのだからこの程度のお遊びなど余裕で動けるのは当然だ
「おーっと?」
少し強めの風に軌道を大きく横に反らせたシャトルを、おどけた調子で慌てて追いかけて打ち返した
「ああ!ごめんなさーい!」
「よゆーよゆー・・・ほいっ」
仕返しと言わんばかりにやや強めの音を立てた羽は五虎退より少し外れた位置にシュンと飛んでいく
「わーっ!!」
「あっはは!」
そんなやり取りを表庭に面したこの縁側で預けられた小虎さんたちと眺めていた
「あ、姫鶴さんだ」
「おっ。五虎退が遊んでもらってるんだな」
通路の向こうからわいわいとやってきた乱や愛染君達数刃が二人を見つけ、どやどやと踏み石にあるつっかけに飛び降りて駆け寄っていく。
急に増えた観客に何だ何だと驚いた表情をしながらも何かが零れる様な、柔らかな微笑みだった。菩薩の様に。
「あー何?やろうっての?」
例えその顔と、やる気がなさそうにも見える所作と殺気満載の口調が一致しなかろうとも。
「おっしゃあ!!」
「はーいいくよー」
「次オレな!!」
五虎退がラケットを愛染君に譲り次の試合が始まった。
最初から全力で打ち込まれるその羽をやはり余裕といった風情で彼は打ち返していくが次第に打ち返す音もラリーのスピードも加速していく。
「うおおおりゃあああああ」
「あああああ?おらっ!」
なんだかんだで優しい彼は嬉しそうに子供たちに振り回されている。多分。