天高く舞い上がる『アイツ』を見て、子供ながらに憧憬を抱いたあの感覚を、今でも忘れられない。どこまでも自由で、果てもなく奔放で、俺が追いかける前に居なくなっちまったけど。風に乗って気ままに飛び去る背中を見上げて、伸ばした手を下ろした時のやるせなさを、いつだって胸に刻んで、目に焼きつけた速さに恋焦がれてるんだ。
背中にぺたりと貼り付いた『アイツ』の影は、古い記憶の中でしか生きていなかったんだけどな。
もう一度会えるとは、思ってなかった。
◇
激戦区の盆栽プラザで命からがら生き延びて、激しい銃声の残響が耳の奥を揺らしている。二部隊分のデスボックスがプラザの屋上のクロスする通路に山のように積まれており、物資漁りもそこそこし終えたところだ。念のため、屋上広場の垂れ幕で部隊数を確認しようとドローンを飛ばす。そこでようやく、同じチームの彼の姿が、自分の近くに見えない事に気が付いた。どこにいる、という疑問はすぐに解消される。
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