無題鮮やかな大輪の花の前で立ち止まった彼の、凛とした姿勢と差した光の角度があまりに様になっていたので、咄嗟にシャッターを押して「美しい」と漏らすと、「やめろよ」とはにかんで、
「そんな事言われても嬉しくねえ」と突っぱねる。
撮影に必要な距離を取り払って、ほんのり色付いた耳許へ囁く。
「ならどうして、照れてるの」
少し揺れた素肌の肩を指の甲で撫で、そっと背中を通って腰へ掌を添えると、黒子の粒が点々とした白肌に絵の具を落としたように朱に染る頬がまるで完熟した苺のようで、思わず喉が鳴った。
「うるせ、だまれ」
食欲を見抜かれたようにひとくち分、唇を奪われた。