聖なる夜に【聖なる夜に】
「お帰りなさいませ、ご主人様❤︎」
最早突っ込みすらする気のしない挨拶をさらりと逃わして、ダインスレイヴはじっと迎え入れてくれた少女を見る。
「……ただいま、蛍」
すっかり見慣れてしまったいつものメイド服──ではなく、白いもこもこが付いた真っ赤なミニスカ姿の蛍は、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。もしや、とカレンダーの日付を思い浮かべて、ダインスレイヴはあ、と少々間抜けな声を上げた。
クリスマス──世間が浮き足立つ、年に一度のキリスト生誕日……ということになっている、いわば恋人たちの「聖夜」である。
(仕事に忙殺されてすっかり忘れていたが、そういえば街中がやけに騒がしかったな……)
半同棲状態の「彼女」には申し訳ないことをした──そんなことを思いながらチラリと少女の様子を盗み見る。けれどダインスレイヴの予想を裏切り、蛍の機嫌は悪くない。それどころか鼻歌を歌いだすほど良好だ。
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