事務所の廊下に、那由多の舌打ちが響く。
彼の視線の先は、壁に貼られたとあるフェスのポスターだ。
◇
ArgonavisとGYROAXIAに、バンドやDJからアイドルまで約20組もの若手有名アーティストが集う大型フェスへの出演依頼が来たのは、少し前のこと。
ドームで行われるかなり注目度の高いフェスゆえ、出演しない選択肢は無いだろうとどちらのバンドもすぐにオファーを快諾した……のだが。
このフェスにはいつもと違う点がひとつあった。
男性の出演者が、ArgonavisとGYROAXIAのみだったのだ。
◇
「那由多くん!先に来てたんだね!」
横から響く大声に、那由多の肩が跳ねる。声の主である七星蓮は、手を振りながら那由多に近付いてきた。
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