「キラ・・・」
「っんふ・・・・・・」
女の子だったら嫉妬して即死してしまいそうなかわいい顔を、ちょっと恥ずかしそうに困らせてキラのほっぺが俺の手に素直に触れられている。
こんな可愛い人を俺が独り占めしていいんだろうか。
まあ、生まれたところが違った俺たちが、さらに場所の違う月で出会って小さい頃から兄弟同然に育った強固な運命を思えば、キラは俺に会うために生まれてきたんだと傲慢になってもいいかもしれない。
実際、そう思っている。
触られるのに弱いキラは、俺がちょっと触れただけでも体が小さく跳ねてしまう。
キラは知ってる?
俺に触れられたときだけそこまで敏感になっていることを。
そこまで俺が触れたところに神経を集中させなくても・・・なんて心の中では盛大に胴上げされている。
はっきり言うと、俺はキラさえいればいい。
キラを知ってしまえば、どんなに綺麗に演出されたところで他の人なんて霞む。
いいか?
キラの中身を覗いていいのは俺だけなんだ。
普通の男ならしないような声や顔やしぐさをさせられるのは俺だけなんだ。
どんなに誰かー!この人めちゃくちゃかわいいんです!!!って自慢したくなっても、独りでその可愛さに耐えるしかない俺の辛さを分かってくれ。
そうだよって答えるみたいに頬を赤く染めて、照れくさそうに俺を見つめてくる。
こんな顔を見れるのは俺だけなんだ。
世間を虜にしているアイドルグループを鼻で笑えるぐらい破壊的な可愛さだ。
鼻と言えば血管がそろそろ限界かもしれない。
ティッシュは近くにあっただろうか。
キラの肌はすべすべしていて、ほっぺはもちもちしていて、少しだけぷくっとしている。
赤ちゃんか?
16歳になってもいまだに子供体温だからか、ずっと触れているとまぶたが落ちそうになってくる。
しかも暑がりだから割と肌がしっとりしていて手に吸い付く。
そうか、俺の手を離してほしくないのか。
俺たちしかいない部屋に、可愛さに耐えられなくてはち切れそうな俺の心臓の音が耳に響いてる。
そんなにうるさくなるほどだなんて、本当にはち切れて死んでしまうのではないかだろうか。
恐るべし、キラ・ヤマト。
殺されるなら、どうせなら滅多にないキラからキスされているときとかの方がいい。
最後の瞬間にそんな幸せな思いをできるなんて、想像しただけで死にそうだ。
このままだと本当に眠ってしまいそうだったので、ほっぺをふんわり包んでいた手を、導かれるように耳を軽くなでてからキラの後頭部に回した。
そのまま髪に手を差し込むと、まるで俺をもてあそんでいるかのようにキラの髪が俺の手を滑り落ちていく。
なんてさらさらなんだろう。
一般家庭で育ったキラが高いトリートメントを使っているとは思えないので、キラの髪は天からの恵みを十分に受けて生まれてきたのだろう。
神の判断はこればかりは正しいと思うので、後で拝んでおこう。
けれど、さらさらすぎて俺の手から逃げていくようで少し焦れったかった。
まるで恥ずかしがり屋なキラ本人みたいだ。
髪まで可愛いなんて何者なんだ!?
そんなことを考えながら、俺だけが楽しいのではないかと少し心配になったが、キラも気持ちいいみたいでホッとした。
さっきまで今にも泣いてしまいそうなぐらい恥ずかしそうにみつめてきていたが、今は目をつぶってうっとりしている。
それはキス待ちですか?
キラは昔からこうして髪をなでるように梳いてやると喜んでくれた。
喜んでくれるのはもちろん嬉しいので、調子に乗ってなで続けているとよく眠ってしまっていた。
寝ているキラにちょっかいを出すのが密かな楽しみなので、今日も寝てしまわないかななんて子供じみたことを考えながらなで続ける。
それにしてもキラはかわいい。
可愛いなんて言葉で表しきれるならどんなに楽だっただろう。
息は荒くないだろうか。
ひどい顔はしていないだろうか。
手が震えてしまっていないだろうか。
一応静かに興奮する特訓はしたが。
抑えられるようになるまで大変だったなあ、なんてひどい興奮具合でキラに引かれていた日々を思い出す。
それでも好きでいてくれたキラはもはやナイチンゲールだ。
はあ・・・。
キラといると1分が光の速さで過ぎていく。
俺は詩人だっただろうか。
まぶたが落ちてきて思考回路にシャッターがかかる。
触れたところからキラの熱に溶かされていく。
・・・もう、このままでいいや・・・。