吸死中華奇譚中華パロ
──、左目の中に虫がいる。
違和感に気付いたのは、瑞々しい藤が咲く春の頃だった。眼球の表面を節足が這いまわる……、言葉にするにも異常な違和感。乾き目か、目玉の毛細血管が詰まったのか……。
ピクピクと瞼が痙攣する合図とともに、瞳の中に節のある黒い影が現われて。左目をゆっくり動かすと、ソレは端に切れることなく中心に向かってゴロリと動くのだ。……、まるで、自分を見ろと言うかのように。
棘のある足と、開閉する口……。その黒い影が『百足』に似ていると気づいた頃には。黒い影は、昼夜を問わず私の視界に現れるようになっていた。
医師に尋ねると、気鬱だろうと言われ薬湯を出された。目玉に傷は無く、気が滞って心の病を発症しているのだろうと。
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