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    さわら

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    さわら

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    できてるやつ

    ##エリオスR
    #アシュグレ
    ashGray

     もともと一人きりで過ごしていた共用スペースでは、トレーニング終わりに暇だからと適当に流し始めたアクション映画をつけたまま。
     アッシュと同じくオフの日だからと自室に籠もってゲームばかりをやっていたはずの自堕落な男が珍しく隣にやってきたのが小一時間前のことになる。
     おかげで、肩を並べてとりたてて興味もない映画をだらだらと観るはめになった。
     グレイと交わした言葉でアッシュが覚えているのは、『……隣、いい?』『勝手にしろ』くらいなもので、その後二人の間には特に会話らしい会話もない。
     既に話は佳境に入っているような盛り上がりを見せているが、アッシュの頭には欠片も映画の内容など入ってはこない。というのも、全ては隣に座るグレイが悪いのだ。
     グレイは、普段はアッシュと顔を合わせないようにとそそくさと自室へと引き篭もってしまうような男である。自分の他に誰か居れば別であるが、基本的に彼はアッシュと自ら二人きりの空間に身を置くことを避ける。
     それは紆余曲折を経て、ずっと曖昧だった関係を所謂世間で言うところの恋人同士なるものに落ち着かせても変わらない。
     自分たちはヒーローである以上、本分がある。甘ったるい雰囲気ばかりに身を置いて、現を抜かすわけにもいかない。だからそれでいい。
     キスもセックスもして、なにより好きだなんだと学生時代に終わらせておけとばかりの胸焼けしそうなやりとりも、存外悪くはない。
     だが、それを交わしていて尚、顔を見れば緊張した面持ちを見せるのは流石にそろそろ慣れろよと口にしてやりたくもなるのだが。
     とは言えだ。
     そんな男が、珍しいことに映画を観始めたアッシュに自分から近づいてきた。かと思えば、ソファに座る己の隣に座り、小一時間も大人しくじっとしているのである。
     観始めた映画に興味があるのかと思えば、どうやらそうでもないらしい。
     テレビを注視している素振りでいながら、その実ちらちらとこちらに視線を向けてくる気配がある。
     一度や二度ならば、気の所為であるとか、偶然だと思って流せもする。しかしそれが何度も続けば、流石に何らかの意図があるのだろうと思わざるを得ない。
     何が目的なのか、それをグレイ自らが口に出すまであえて放置していたのだが、流石にそろそろ我慢の限界でもある。なにしろ、彼が隣りに座ってからずっとそんな調子であるのだから。
     結局、痺れを切らしたのはアッシュだった。
    「……おい」
    「ヒェッ」
     殆どただつけているだけのつまらない映画をテレビごとリモコンで消した。
     隠しきれない鬱陶しさをそのまま滲ませて口を開けば、こちらを見ていた男の肩が大袈裟にびくりと跳ねる。それを横目で確認すれば、かち合った視線が背中を向ける勢いで逸らされた。アッシュは片眉を上げる。
    「さっきからなんだ。じろじろ見やがって」
    「みっ、……見てない、よ……」
    「見え透いた嘘ついてんじゃねえよ。言いたいことでもあるならはっきり言いやがれ」
    「う……」
     狭いソファの上でにじり寄ると、その分だけグレイの身体が後ろに倒れるように後退って離れる。しかし逃げを打つ身体は、肘掛けに背中が当たってずり下がるように止まったようだった。それをいいことに覆い被さるみたいな形で距離を更に詰めれば、まるで怯えた小動物がするように身体を強張らせながら、グレイがアッシュを見上げてくる。
     長くもっさりとした重い前髪から覗く朝焼けの瞳はまるでこちらの様子を伺うようだった。けれど、かと思えば明後日の方向へとすぐさま逸らされてしまう。
    「おいコラ、逃げんな」
    「わ、わ……っ」
     逸らされた視線をこちらへと戻すように頤を掴めば、怯えたような色が乗る。しかしその瞳もぎゅっと強く閉じられてしまい、苛立ちに舌打ちしかけた。
     けれども、再びそろそろとその朝焼けが開く。
    「……あ、アッシュ……」
    「なんだよ」
    「……」
     己の名を呼んだ口ははくはくと空気を噛んで。けれど音をそれ以上紡ぐことなく、目元を薄く染めながら言い難そうに閉じられてしまう。
     代わりに、ゆらゆらと揺れるアンバーの瞳がなにかを訴えていた。
    「おい、はっきり言えっつってるだろうが」
     グレイの瞳を見て心が読めるわけでもなし。明確に何がしかの意志があるのは明白だが、言葉ごと飲み込まれてしまえば気持ちが悪い。
     言う気がないのであればそもそも変な素振りなど見せなければいいのに、まどろっこしくわけのわからない態度を見せるグレイにアッシュは短気を滲ませる。
     語気を荒げるだけでグレイはびくりと怯えた。
     けれど次の瞬間にはむっとしたように眉をひそめて、落胆した色をその瞳に乗せている。
    「……え、映画……、もう観ないなら、僕部屋に戻るから……」
    「あぁ?」
     そんなもの、そもそも興味を持って観ていたわけでもあるまい、とアッシュは呆れた。
     グレイが視線を注いでいたのは目の前のテレビではないのだ。そのことは、注がれていたアッシュ自身が一番理解している。
     ぐい、と胸板を両の手で押される。けれどそんな力では退いてやる気にもならない。
    「拗ねてんじゃねえよ」
     逆にその手を掴み、ソファに縫い付けるように押し付けてやった。
    「……っ!」
     グレイははっとしたように息を呑み、アンバーの瞳を開いた。
     けれど、それ以上の反応はない。
     暴れることも身動ぐこともなく、抵抗らしい抵抗は少しも見せなかった。
     普段ならばもう少し悪あがきをしてみせたはずだ。なのにこうもあっさり捕まったのは拍子抜けだった。
    「……ギーク、テメェ部屋に戻りてえんだろうが。これじゃあいつまでたっても戻れねえぞ?」
    「……っ」
     少しくらい抵抗でもされなければ面白みもない。喉奥で揶揄するようにくつくつと笑い、わざとからかうように耳元で囁いて煽ってやれば、組み敷いたグレイが息を呑んだ。
     先程まではむっとしてどこか拗ねているような表情であった顔を見れば、案の定、白い肌をさっと赤く染めている。恥ずかしそうに俯いて睫毛を伏せていた。その奥で、朝焼けがゆらゆらと揺れている。かと思えばアッシュを捉えて色を濃くした。――まるで、何かを期待するように。
    「……お前……」
     グレイは未だ抵抗を見せなかった。アッシュに組み敷かれていることをよしとするように。
     アッシュは一度息を吐き、グレイの上から退く。
    「え? ……あ、アッシュ……?」
     解放されるとは思ってはいなかったのか、戸惑ったような声を漏らしたグレイが後を追うように起き上がった。
     それを見越し、アッシュは腕を伸ばして無防備な手を掴んで引き寄せる。バランスを崩した男が小さな悲鳴を上げて倒れ込んでくるのを支え、座る己の膝を跨ぐように座らせた。
     僅かに視線の高くなったグレイを見上げ、戸惑った表情を返してくる男ににやりと笑う。
    「……ずっと、期待してたのかよ」
    「そ、そんなんじゃ……」
    「欲求不満って、顔に書いてあんぞ」
    「う……」
     図星のように、グレイは言葉に詰まっていた。それ以上の反論はなく、代わりに肯定するように頬がみるみる赤くなって俯く。
     アッシュはと言えば漸くグレイの物言いたげな視線の意味が理解できて満足だ。愉快そうにくつくつと喉奥で笑って、羞恥で狼狽えるグレイの様子を堪能した。
     思えば最近かまってやらなかったのだ。
     オフの日が被る日はあまりなく、かと言って四人が同居するこの狭い部屋の中で事に及ぶのは憚られる。
     メンターとルーキーでは自室が別であることも一因だ。
     一度始めてしまえば、泣いて懇願するまでアッシュはグレイを許すつもりはなくなる。縋りつかせて、『欲しい』と強請らせて、グレイ自らがアッシュを求めるまで虐め抜くのがアッシュの趣向だ。それを、この狭い部屋で行うつもりはない。
     とは言え、珍しいこともあるものだと思う。
     基本的にグレイは受け身体質だ。
     なんだかんだと理由をつけて食事に誘ってやるのも、ホテルを手配してやるのも殆どアッシュがやっている。誘えば大人しく付いてきて、触れれば戸惑いながらもやがてはすぐに花開く。
     おどおどした態度に苛立つことは儘あるが、存外表情はくるくると変わってわかりやすい。美味いものを食わせてやればはにかむし、快楽に堕ちればどこまでもぐずぐずに溶けていく。それをこの手で全て与えてやっていると思えば、満たされる征服欲に高揚し、背筋がぞくぞくするのだ。
     けれどグレイが自ら行動を起こすことは殆どない。今日とて結局アッシュが気付くまで終ぞ言葉にはしなかったが、それでも進歩したと言える。
     したり顔をして、アッシュは薄くて小さな尻を揉んだ。
    「ひゃうっ」
     びくり、と肩を跳ねさせながらグレイが悲鳴を上げる。
    「あ、アッシュ……お尻……」
    「あ? それを期待してんだろうが」
     今更なにを言ってやがると口にすれば、真っ赤になったグレイが、「あ……」だの「う……」だのと意味のない言葉で唸って口籠る。けれど意を決したようにふるふると首を振って、「ちがう」とだけ零した。
    「違う?」
     片眉を上げて聞き返してやると、グレイは肯定するようにこくりと頷いた。
    「そう、じゃなくて……僕は……」
     もごもごと歯切れ悪く口にして、視線をうろうろと彷徨わせている。
     恥ずかしい。言いたくない。――そんな声が聞こえるようだった。
     けれど、だからと言って許してやるつもりもない。
     仕掛けてきたのは他でもない、グレイだ。
     はやくしろとばかりに促すように尻を叩けば、再びびくりと肩が跳ねて、朝焼け色のアンバーがじわりと熱を持つ。
     こんな顔をして、『期待していない』などとよく言えるものだ。
    「ギーク」
    「……っ」
     再度促してやれば、もうこれ以上は口を噤んでいることはできないと悟ったか。
    「……………………キス、したい………………」
     気の遠くなりそうな間をたっぷりととって、グレイは火を吹きそうなほどに赤くした顔をして漸くそう零した。
     既に色々なことをしている癖に。
     最中ではもっといやらしいことを口にする癖に。
     たったそれだけのことを、これだけの時間をかけて、まるで無垢な少女のように口にする。
     本当にこれが同い年の男であるのかと呆れもするし、お前は今までなにをやっていたんだと詰りたい気持ちもある。
     だが、同時に高揚もする。
    「――だったら、してみせろよ」
    「え……?」
     くつくつと喉奥で笑って、顎を自ら上向かせる。
     戸惑う様子のグレイの瞳が、アッシュの目と唇をいったりきたりさせている。
    「あ、アッシュ……」
     音を上げるように漏らされる声には気づかぬふりで応えてやらない。
     戸惑いと羞恥。理性と欲望に揺れる表情をたっぷりと下から見上げて、それが意を決して唇に落ちてくるまで堪能するのも悪くない。
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