君に贈る空の果てを目指す旅路で立ち寄った新たな島。
多くの団員が補給と娯楽、様々な理由で下船していくなか、シスは甲板からグランの背を見送った。
彼の隣に小さな影も風に靡く蒼い髪もなく、代わりに美しい黒髪の背中があるのが珍しく、雑踏に消えるまでずっと見つめてしまった。
薔薇のドレスの美しい女とは直接話をしたことはない。顔と名前くらいは知っている。
この騎空団の始まりの仲間だからグランと親しいのは当たり前だ。
だが二人だけで島に降りてどこかに向かうのを見るのは初めてだったから。
珍しいと思って、気になった。
珍しいとは思ったが数日も経てばいくつもの下船の光景の一つになり、シスの記憶の中に埋もれていった。
ある夜、グランに呼ばれたシスは彼の部屋に赴いた。
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