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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声2

    ##宇奈七

    こんなことを今言えば、お前は驚いて目に涙を浮かべるのだろうな。涙を浮かべて、何と言うかな。「クロは『人殺し』じゃないでしょう? クロは優しいもの。そんな怖いこと、できるわけないよ」。こんなところだろうか。いいや、と俺は首を横に振らねばならない。お前は知らないのだ。俺が今まで、彼女とお前が見ていないところで何をしていたか。彼女に出会うまで、何をして生きてきたか。俺が本当は、どんな人間なのか。
     これから俺が話すのは、俺自身の過去だ。彼女には一度くらいは話した気がするが、お前には一言も告げていない。お前から尋ねられたときには、ただ「ずっと旅をしていた」と答えていた。そうして誤魔化し続けて、お前が大人になった時に全てを話そうと思っていた。だが、先にも言ったように俺にはもう時間がない。時間を延ばすつもりもない。ただ、お前にはこの先ずっと、長い長い人生が待っているはずだ。その人生のどこかで、いつの間にかいなくなったクロという人間について思い出したとき、自分はそいつに見捨てられたのだと思って傷ついて欲しくはない。俺は理由があって、お前と彼女から離れるのだ。その理由を語るには、俺が生まれてから今に至るまでの経歴をも話さなくてはならない。
     長い話になるだろう。十分な時間を用意して聞いて欲しい。それから、そうだ――この記録はお前のものだと初めに言ったが、お前が信頼する相手が傍にいるのなら、共有しても構わない。誰かと一緒に聞いてもいい、ということだ。俺をいつも「優しい」と言っていたお前には、些か衝撃的な内容かもしれない。お前は決して孤独になることはないと、俺は信じている。傍に誰かがいるのなら、遠慮なく肩を借りるといい。
     それでは、始めよう。


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