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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声3

    ##宇奈七

    トラック3

     まずは、そうだな。俺が生まれてからのことを話そうか。出身はギリシャのどこか。これは、いつか話したな。
     ギリシャのどこかの、子どもがたくさん集まった建物に俺は暮らしていた。朝六時に起床、洗面台に行列を作って顔を洗い、七時には広い居間で朝食を摂る。午前の勉強、十二時には昼食、午後の勉強、夜六時には夕食、それから入浴して九時には就寝する。建物の東側の窓からはギリシャの都市が見え、西側の窓からはのどかな山林が見えた。建物は古いが頑丈で、いつも清潔に掃除がされていた。このあたりは、表の社会にある子どもの施設と変わらないだろう。身寄りのない子や、事情があって大人と一緒に暮らすのが難しい子を集めて育てる施設だ。
     違っていたのは、「勉強」の内容と方法だ。子どもたちには、ナイフが一人一本ずつ配られる。そして、教師が――正規の教員や保育士などではなかったろうが――ともかく、教室に現れた大人が言うのだ。「あなたたちの半分が動かなくなったら、午前の勉強はおしまいです。残った子には、お昼ごはんがあります。さあ、始めましょう」。
     俺は言われた通りに、他の子どもたちを動かなくなるまでナイフで刺した。三歳頃には俺は、ナイフで首筋を斬れば人間は死ぬ、と学習していたらしい。蛇口をひねれば水が出る、ドアノブを回して押せばドアが開く。そういう動作と同じだ。おもちゃのボタンを押して、音が鳴ったときのような楽しさはそこにはなかった。ただ、人は刺して斬れば死ぬとだけ覚えた。そうすれば自分は生きることができる。生き残る。生き延びる。
     動かなくなった子どもを見て、一番に覚える感情は安心感だった。自分はこうならずに済んだ、という気持ちだ。だが、年を重ねるごとに、それも薄れていった。殺すために生き、生きるために殺す。十になる頃にはすっかり、それ以外に自分の存在意義を見出さない機械のような子どもに育っていた。
     同じ頃、施設に集められていた子どもの数が遂に四人にまで減った。四人のうち、女は俺一人で、俺が最年少だった。大人たちは、十五歳の最年長の子どもから順に「アスプロ」「コーキノ」「マヴロ」「クロロス」と名を与えた。俺はそのときからクロロスとなり、俺たちは「黙示録の四騎士」という名の暗殺者集団となった。
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    まろんじ

    PROGRESS星の声12目が覚めた後、医師や看護師たち、コーキノとマヴロから聞かされた話を統合すると、こうだ。
     俺は、アスプロが死んだと聞いた途端、何も言わずにナイフを取り出した。最初は胸を、そして腹や脚や、顔や首、とにかく体中をナイフで刺して傷つけたという。
     途中から何事かの言葉を泣き叫んでいたが、コーキノとマヴロは俺を抑え込むのに必死で、よく聞き取れなかったと言っていた。「オル──何とか、と言っていたが」とコーキノが何か聞きたげにこちらを見ていたが、俺はただ俯いていた。
     この自殺未遂により、俺は視野の半分ほどを失っている。見えている部分にも負担がかかり、何十年か後には見えない部分の方が多くなる可能性が高い。
     それから──。
    「子宮の損傷が激しく、手術を行いましたが……」
     腹の子は死んだ。いや、俺が殺した。
     俺は黙って話を聞き、それから感謝の言葉を述べた。医師たちが、俺の病室を出て行った。
     ──どうして、生き残ってしまったのかな。
     そう思わないではいられなかった。
     自分だけ──一人だけ生き残って、何の意味があるというのだろう。四騎士はあの任務を最後に解散が決まっていた。俺の、本来ならば俺と 1375