真夜中のかくれんぼ 冷えた頬に目が覚めた。
薄目に開けた視界の中、暗闇と家具の輪郭が淡く交わり、耳がはたはたとカーテンの遊ぶ音を捉える。
寝返りを打てば、窓から差し込む光が繊細な少女のシルエットを浮かび上がらせていた。
「りおん?」
「あ、ごめんくじょうくん。起こしちゃった」
振り向くその顔は月光に照らされて陶器のようにも見える。
薄い玻璃のような髪は柔らかく波打ち、細い指と真っすぐに伸びた足は窓枠の額縁に収まらない。そんなものに収まる筈のない彼女を、自分たちはよく知っている。
(俺たちの愛した莉音だ。)
「ん。だいじょうぶだ。眠れないのか?」
「ううん」
「そうか」
こうしたかったの、とでも言うかのように窓枠に寄りかかったまま応えるりおん。
1155