どうしたもんか、エリック・サティ「しっかしあんた、マジで納豆好きなんだなァ……」
エスカレーターの上で、碧棺左馬刻は後ろに立つ神宮寺寂雷に問うともなく呟いた。
「スープカレーまで納豆入りとか、ちょっとビビったぜ」
晩秋の昼下り。
所用で寂雷の元を訪れた左馬刻は、寂雷の誘いで、とある西新宿の高層ビルの地下の食堂街で昼食を摂ったのだった。
「ふふ、悪くはなかったでしょう?」
「……まあ、そうだけどよ」
返す言葉に我ながら切れがない自覚がある。
「つぅか味見っつっても、"あーん"はねぇだろがよ、"あーん"はよ……」
つい30分ほど前のことだ。
自分が注文した「骨付き地鶏と牛すじのスープカレー」が届くまでの間、自分ならまず頼まないであろう「北海道産丸大豆の納豆と有機ホウレン草のスープカレー、玄米ごはん変更」なんてものを喜々と口に運ぶ寂雷を、ついしげしげと見つめていた。
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