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    こもやま

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    こもやま

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    モンモンが左利きかもしれない話

    ##小説

    王と軽食 ふかふかのソファに腰掛け、ローテーブルに向かってベリトが左、ソロモンが右。
     アミーがそこへ運んできたのは、大皿に盛られたサンドイッチの山。少し焦げ目のついたトーストの香りと、たっぷり挟み込まれたタマゴの具が今にもこぼれそうで食欲をそそった。

    「気が利くじゃねえか」
    「何度呼んでも食卓に来ないからでしょ。ほんと本が好きね」
    「ありがとう、アミー」
    「さっさと食べてよ。洗い物済ましちゃいたいんだから」

     アミーはすたすたと厨房へ戻っていく。怒られちゃったな、と二人は笑い合った。眺めていた本を片付け、にしても量が多いな、食べきれるかな、なんて言いながら皿にそれぞれ手を伸ばすと、コツンと。

    「ごめん!」

     ソロモンがとっさに手を引っ込めた。左手の指輪が、ベリトの手の甲に当たったのだ。
     
    「痛くはねえよ。気にすんな」
    「俺左利きだからさ。隣の人とたまにあるんだよ」

     そう言うとベリトから少し離れて座りなおした。

    「そんなに離れることねえだろうが」
    「食べてるときに当たると危ないよ。場所変わるのも面倒だろ」
    「テメェが気をつけりゃいいんだ」

     だから気をつけてるじゃないか、とソロモンは手を伸ばし、サンドイッチを口へ運ぶ。

    「うん!おいしい」

     もぐもぐと食べながら話しかける。ベリトは何も言わなかった。いつもは相槌くらい打ってくれるのに、不思議に思いその顔を覗き込むや否や、

    「ふん」
    「え。ちょっと?!」

     ベリトは両手でサンドイッチを取り、飲み込むように次々食べた。ソロモンが手を出す隙もないまま、美味しいサンドイッチはみるみる減っていく。
     
    「俺の分!」

     思わず、ベリトに飛びかかるように身を乗り出した。
     ベリトはさっきよりもぎゅっと距離が縮まったのを認めると、

    「そうだな。美味い」

     満足そうに笑い、今度はゆっくりと食べだした。

    「なんなんだよ、もう…」

     ベリトのこういった言動は今に始まったことではないが、今日のこれは新しい。離れればまたサンドイッチが減らされそうで、ソロモンはぴったりとベリトの側にいるしかなかった。
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    k_kuraya

    DONEベレトの眷属にならなかったディミレトの幸せについて考えた、二人の約束についてのお話です。転生を含みます。【約束の果てに 1−2/2】

     肌を刺すような冷気に意識を呼び起こされ、ディミトリは酷く重い瞼をとろとろと持ち上げた。次の節に跨がる夜更けのことである。まだ夢心地であるような、霞がかる天井を暫く見上げ、はたはたと音がする方へと目を向ける。はたはたと、青いカーテンが靡いている。窓が――開いている。そこから満点の星空が見え――しかし綿雪が降る不思議な夜だった。窓から入り込んだ雪が床に白く積もっていた。
     いつからそうしていたのだろう。開け放たれた窓の前に佇むベレトは静かに夜空を見上げている。
     雪明かりに照らされて滑らかな輪郭は陶磁器のように白く、髪の一筋一筋が、エメラルドの瞳がまるで星を孕んだようにキラキラと煌めいている。いつもは黒揃えの衣装を好んで身に着けているが、今夜は雪のような白衣である。群青の裏打ちと金色の刺繍が施された外套は、ディミトリが誂えさせたものだった。
     白衣の衣装はニルヴァーナで陣頭指揮を執っていた頃の――大司教として大聖堂に佇んでいた頃の姿を思い起こさせる。ディミトリは彼が時折見せる神秘的な美しさにたびたび目を奪われることがあった。聖書やステンドグラスに描かれた神 6061