注文制覇は少しずつ【注文制覇は少しずつ】
『くろうさぎさんをいじめてる。ゆるさない。ぎゃわずはもっていたかさでせっとうだんをなぐりはじめました』
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトは帝国図書館閲覧館にいた。閲覧館は図書館スタッフや文豪たちの間で使われている通称で本の貸し借りが出来る場所だ。
帝国図書館本館は閲覧専門の図書館だったのだが、今は本の貸し借りも出来る。本によっては図書館で読んでほしいというものも存在している。
「待ってたか?」
ラヴクラフトがソファーで新刊の絵本を読んでいると話しかけてきたのは正岡子規だった。ラヴクラフトは大きく頷く。
「暑い」
「ここは涼しくするようにしているみたいだが、涼しいも涼しいで身体に悪いからな。人工的に冷やしているし」
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