アライバル.1日常とは永遠に続くと錯覚するほどの当たり前の繰り返し。
そして、それはいつだって当たり前のように俺の前から姿を消してしまうんだ。
週末の夕飯時。いつもと同じように3人でキッチンに並び、いつもと同じように一勇のエプロンの紐を結び、いつもと同じように子供用包丁を握る小さな手を注意深く見守っていた。
今日の夕飯は一勇リクエストの野菜サラダだ。最近子供用包丁を買ってから、野菜を切るのにハマったらしい。メインは織姫リクエストのチキンステーキ。
「千切りむずーい!」
「あんまり無理して細くしないでね、あぶないから!」
ピンポーン
唐突に来客を告げるチャイムの音。この音が鳴ると一勇は、どこかのコンビニと同じ音だといつもはしゃいで玄関に走っていく。今日もまた、中途半端に千切りにされたキャベツの塊には目もくれずにパタパタ走り出す。揺れるエプロンの裾がリビングのドアに消えていく。
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