Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    すずめ

    かべうち絵日記練習帳
    リアクションでかまってくださったかた、ありがとうございます

    (すき → ほもとゆりと女体化とろりしょた)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 💪
    POIPOI 603

    すずめ

    ☆quiet follow

    へーテキスト機能でござるかーってなったので、テストがわりに手元から適当に引っ張ってみました。

    現代びゃくしょーのつもりのやつ。

    ##文

    詰め込んだ願望
    ・ジェッソトップ2の共闘
    ・戦場で役立つ入江様(大盛)
    ・薔薇の女王呼ばわりされる入江様(特盛)
    ・もうどうにかこじつけて入江様を盛りたい、という産物



    ◆白蘭を選ぶ正一くんの話
    (※ 一部、HEL/LSINGのオマージュみたいなところあります)


    鈍い鈍いと言われたこの頭でも、一度は“それ”を考えたことがある。
    もし彼が《もう一度》を願ったら。
    そのために力を惜しまぬと言い放ったら、と。


    唐突な呼び出しだった。
    指定場所は、見慣れた並中の校舎。
    その屋上へ君臨するように降り立った天使を、綱吉は食い入るように見上げた。

    「どうして! 白蘭!!」
    「だって、ああも見事な完敗って僕、初めてだったんだもの」

    にこりと、現代に戻ってから見てきたような邪気のない笑顔が綱吉へ返される。
    そう、邪気は、悪意は、感じないのに。

    「失敗したら、反省するでしょう? 反省したら、どうすればよかったか考えるでしょう?
    んでね?」
    「…………」
    「どうすればよかったかの算段がついたら、ほら、試したくなるじゃない?」

    両手を広げて、大仰な演者のように、白蘭は笑う。
    けれどきっと、本気だ。演じてなどいない。
    白蘭は大まじめに、失敗後の自己への挑戦として、世界をもう一度と望んでいる。
    綱吉は耳にあてた携帯電話を握りしめた。
    せめてまだ、はじまっていないうちに。
    事の起きていないうちに。
    血の、けがの、痛みのないうちに。
    有能な友人へ説得を頼もうと思ったのに、今日に限って中々つながらない。


    “入江正一”


    ディスプレイが映す不通の表示に、綱吉は慣れない舌打ちをした。

    「悪いようにはしないよ。どっかのミルフィオーレはなんだかんだホワイト企業だったんだから。
    君らの指輪だって奪わない。
    僕はもう僕だけだから、トゥリニセッテをそろえる意味もないし?
    ただ、もう一度。失敗を踏まえた僕がどこまでできるか試してみたくなっただけ。
    僕が本当に掌握に足らない人間か、知りたくなっただけ。
    ねえ、壁を越えてみたいって考えるの、そんなに悪いことかな?
    力ずくで止めようとするならまあ、勝たせてもらうけど。
    あ、心配しないで。僕が勝ったら、怪我は治してあげるから」
    「そもそも! オレは誰かが怪我をするのが嫌なんだよ!!」
    「……ん、そうだった。そうだったよね。君はそういう子だ、綱吉クン」

    首を傾けて、微笑む。
    さっきの演者ぶったわざとらしい顔じゃない。
    眉を少しだけ下げた、距離のある笑顔。

    「でも、君がそういう子であるように。僕はこういう性質なんだ。
    スゲー前向きなの。
    やれることばっかりだったから、出来なかったことが殊更印象深く残るんだ。
    大丈夫。
    これは僕独断の思い付きだから、ユニちゃんも桔梗君たちも知らないし関係ないよ。
    君が本当に止めたいなら、今このときに、僕だけを倒せばそれでOK」

    ね、簡単でしょ?
    歌うように言ってのける白蘭へ、斜め後ろにいる獄寺が簡単に言いやがってと悪態をつく。
    胸が、ざわつく。
    なんだか嫌な予感がするのだ。
    奥歯を噛んで、綱吉は手のひらの内で三度目のリダイアルを試みた。
    自分だけじゃとてもむりだ。
    説得なんて、できやしない。
    はやく、はやく正一君。
    あいつの親友で頼れるきみの、知恵と言葉が必要なんだ。


    聞きなれたコール音が6つ、めいっぱい鳴り終えかけた刹那、それは途切れた。


    『────もしもし、ツナ君? ごめんね、すぐに出れなくて』
    「……っ! 正一君! 聞いてよたいへんなんだ! 白蘭が急にまた世界が欲しいだなんて言ってて!」
    『ツナ君。うん、知ってるよ。向かってる』
    「知って……!? そうだったんだ……うん、よかったぁ。正一君が止めてくれればきっと、白蘭だって思いなおして、」
    『でも』
    「……? 正一、くん?」

    かつんかつんと、声の向こうで硬質な足音が響いている。
    広くない通路を歩いているような反響音。
    外ではなさそうなどこか。
    向かっていると正一は言ってくれたけれど、一体今どこにいるのか。
    そもそもどうしてこの事態を、場所を、“知っているんだろう”?


    「──ねえ、正一君。君、今どこに、」
    『ごめんね』


    胸が、ざわつく。
    電話を耳に押し当てながら、綱吉は白蘭から目を離さずにいた。
    白蘭もにこにこと綱吉に向き合っていたのだが、不意に背後へ振り向く。
    見間違いでなければ、およそ浮かべたことのない、驚いた顔で。
    目線の先は多分、屋上の出入り口のあたりだ。
    だれか、来たんだろうか。
    口元が微かに動く。
    遠い屋上での小さな呟きである。地上から音は拾えなかった。

    「“なんで”って、言ったな。今」

    足元のリボーンが唇を読んだらしい。
    なにに驚いたのかは、直ぐに知れた。
    穏やかな歩調で屋上の端に寄る人影。
    次第に見えてきた顔に、眼を見開く。
    ああ、これは白蘭も驚くはずだ。
    眼鏡の奥で揺れる若葉色。
    そこには綱吉の通話相手、入江正一が佇んでいた。
    綱吉と同じく、片耳に携帯をあてがって微笑んでいる。
    開いている片腕で手すりに寄りかかり、ゆっくりとこちらを見やる。
    勘が働いたのか、一瞬の隙で小さな家庭教師が音声をスピーカーに切り替えた。


    『やあ』
    「……ぇ、…………しょ、いち君……? そこ、危ないよ、白蘭が」
    『君に嘘は、つきたくなくて』
    「ど、いうこと……?」


    眉が下がる。
    苦笑いみたいな顔。
    いやだ。なんでそんな顔してんの?
    喉がからからして、痛い。
    震える声で、縋るように尋ねる。


    「ねえ、今度も一緒に、協力してくれるんだよね? あいつを、白蘭を、止めに、」
    『来たわけじゃ、ないんだ』


    断ち切るような返しだった。
    大人みたいな顔だった。
    そう、そうだった。
    子供のまま、今の自分の続きのまま参戦した綱吉とは根本的に、違う。
    あの人たちは、10年生きた別の自分の記憶を贈られていて────。
    『ごめんね』三度目の謝罪。
    正一は穏やかな声で続ける。


    『僕、もう一度は殺せない』
    「でも! あれはオレが……!」
    『殺意のありかがどこにあるかは、前にしっかり確認したはずだよ』
    「…………ッ!」


    いつかの、未来。
    会話できた機会は数えるほどだったけど、その合間を縫って、大人の彼が告げた言葉。
    膝をついて目線を合わせて、はじめておつかいに出る子供に車は怖いんだぞとでも言い含めるような真摯さで、語られたそれ。

    “いいかい? 頼んでいるのは僕だということをどうか、忘れないでほしい。
     君は僕に利用されただけの、言わば道具であって。
     君らの気持ちを焚きつけているのは、僕であって。
     殺意のありかは、僕から動かないんだってことを”


    君のせいではないんだと、やさしく突き放す言葉。


    『思い出した?』


    返す言葉が、思いつかない。
    見上げて見つめるしかできなかった。
    正一は笑ったまま。
    白蘭は止まったまま。


    『今みたいな“もし”が起きたらって、何度も考えたよ。だって白蘭サンだもん。信用しきれないよね。
    眠れなくなりながら、それでも考えて考えて、もう一度は失えない────闘えないって結論が出た。
    だから、“今日”が来たときの身の振り方は、決めてたんだ』

    泣き笑いみたいな顔だった。


    『今度は隣にいて、一緒に君に、綱吉君たちに、倒されてやろうって』


    言い終えると、翠の眼がゆるりと視線を動かした。
    横顔は、白蘭をまっすぐ、やわらかく射貫く。
    綱吉は直感した。
    あ、外された。と。
    切り離されてしまった。
    きっともう決着がつくまで、正一が綱吉と視線を合わせてくれることはないんだろう。
    かつてのミルフィオーレのボスと腹心が、向かい合っている。
    きょとんとしたまま、白蘭が尋ねた。

    「いいの?」
    「はい」
    「ほんとにいいの? 悪役だよ?」
    「いいんです」
    「今度は、裏切んない?」
    「裏切りません」
    「ほんとに?」
    「本当です」
    「ほんとのほんとに?」
    「ほんとの本当です」

    いつもの逆みたいな表情だ。
    訝しげに幾度も確認する白蘭と、微笑みながら受け答える正一。


    「──────ッ!!」


    遠目にも、白蘭の白い頬が薔薇色に染まったのがわかった。
    ひときわ翼が大きく羽ばたき、正一を抱き込み、床へ転げて見えなくなる。

    「痛い!」
    「やったあ! 嬉しい! スゲー嬉しい! 今の僕、たぶんどの世界の僕より嬉しいよ!!」
    「言っときますけど! ほんと懲りないなって心底呆れてはいるんですからね!」
    「うんうん、でも傍にいてくれんだよね?」
    「そうですよ何度も言わせないでください」
    「ふふ、あは、なにそれ。そんなのもう最強じゃん。なんでもできちゃいそう」
    「それは、なによりで」


    楽しそうに上から降ってくる会話に、リボーンが眉を顰める。
    通話は、白蘭が正一に抱きついた衝撃で切れてしまった。


    「やべーかもな」
    「リボーン……」
    「白蘭はそもそもはちゃめちゃにつえーし、頭もいいから機転もきく。
    未来じゃ匣も指輪も新しく作ってた。
    代理戦までの闘いぶりを知られているツナ側と、知らねー間に知らねー武器をつくっていた“かもしれない”あっちとじゃあ、結構不利だぞ。
    奥の手の数がわかんねえ」
    「そんなの! オレと10代目の力があれば!」

    獄寺が遮るのを視線であしらって、リボーンは続ける。

    「あと、オレらは白蘭と正一の連携を知らない」
    「二人の、連携?」
    「ツナも獄寺も、正一の戦略が堅いのはチョイスで体感済みのはずだろーが。
    いいか?
    未来の正一は、記憶を取り戻す前に白蘭と親友になって、戦争ゲームしてたんだ。
    腹の探り合いする前からウマがあってたやつらだぞ。
    そいつらがチーム組んで敵にまわるってのは、中々ぞっとしねえ展開だ」
    「オレと10代目の絆だって盤石です!!」
    「…………ぅ、ぅん」
    「ついでに、今こっちには了平がいない」
    「え、なんで?」
    「芝生頭?」
    「正一の属性は晴れの活性だろーが。白蘭ひとりくらい、延々と回復できる」
    「あっ!」
    「げっ!」


    そういえばそうだった。
    未来でも現代でもランクの高い指輪を手にする機会が少なかったゆえに印象も薄かったけれど、メローネ基地をまるごとパズルにしてこちらの行く手を苦しめてくれたのは、他でもない彼だ。
    俯瞰し、対策する。
    入江正一の最も得意とする戦術だろう。
    どんだけ厄介なことが起きてるかわかったかと、リボーンが綱吉と獄寺を見渡し、眉を潜めた。


    「だからまず、正一を潰さねーと、」
    「せいかーい♪ できるならね!」


    寄り集まっていたところに、ふわりと軽やかな声。
    振り返る。
    白蘭が浮いていた。
    一瞬で場が凍り、本能が動かした体で咄嗟に距離をとる。
    そんな綱吉達を追いもせず、上機嫌なそぶりで鼻歌交じりに中空にいる敵役。
    胸には一輪、黄色い炎を纏った赤い薔薇。
    薄く開いた薄紫の眼が、ひたりと綱吉をとらえた。
    怖い。
    未だ、この男の感情は理解できなくて、未来の闘いの壮絶さが蘇って、どうしても初手で足が竦んでしまう。

    「話し合いも、いーけどさ。いいの? そんなに悠長で。
    今の僕すっごく機嫌がいいから待っててあげてるけど♪」
    「うるせえ10代目から離れやがれパラレル糸目野郎!」

    噛みつくように言い返すのは獄寺だ。
    気配なく傍に寄られ、気おされかけた今、彼の獰猛は非常に頼もしい。

    「ハッ、お前は確かに強いけどな! 入江は前回、苔動かして人動かして、自分は動かねえまま闘わせてただけの非戦闘員だろうが!
    最終的にチョイスだって負けてたしな!
    闘えるのがお前だけなら、10代目とふたり、数で勝るこっちに利がある!
    入江を潰すまでもねえ!
    挟み撃ちにしてやりましょう! 10代目!」
    「……っ、ふ、ふふ」

    俯いて、肩を震わせて笑う白蘭。
    身にまとう彼の大空の橙に、薔薇から広がる晴れの黄色が混じって、そばにいるだけで眩しい。
    眼が、くらくらする。


    「そっか、君らって僕の作った偽のマーレ壊されて以降、いい指輪持ってない正チャンしか知らないんだっけ」
    「…………ッ」
    「あのさ、正チャンが操れるのって、苔だけでも専用に設置したメローネだけでもないよ。この薔薇見てわかんない?」


    ことんと首を傾けて、指先が胸元を指す。
    じりじりと後ずさった踵が、砂を鳴らした。


    「了平クンだって、植物をグローブにさせてたみたいじゃない。
    でも、相性は動物兵器のカンガルーちゃんのほうがよかったみたいだけど。
    あのね、うちの正チャンはひたすら植物専門でね。
    でも、それには膨大な炎圧と、それを受け止めるいい石と土台の指輪が不可欠なわけ。
    君らのところに身を寄せてから使ってた二流三流のリングじゃあ、本領発揮は無理だったろうなあ。
    まさに正チャンの持ち腐れ。
    持ち腐れてた君らに侮られるとか、悲劇というか喜劇というか。
    今の状況を鑑みると、僕にとっては都合いいんだけどね。
    ……ねえ、聞こえない?」
    「……?」
    「なーにが聞こえるっつうんだよ! 10代目! ハッタリっスよハッタリ!」
    「だったなら、良かったんだけどねえ。実は僕のいるこの位置もこの会話も時間稼ぎでしかなかったりしたら、どうする?
    ほら、ほんとに気付かない?
    振り返って、校舎の壁、見てごらんよ」
    「校舎ァ?」
    「背後から不意打ちなんて、しないであげるから♪」

    しなやかな指が、今度は綱吉たちの背中の向こうを示した。
    警戒は解かないまま振り返り、言葉を失う。
    違う。見慣れた並中の校舎は、あんな、あんなじゃあない。
    壁面をわさわさと覆うように伸びる、あれは────。

    「……なんだあれ」
    「茨の……蔦、か?」

    獄寺とリボーンが戸惑った声で零す。


    「ヒントはあげたわけだけど、もう一度聞いてあげようか。“ね、いいの? そのまま地面の上にいて”」


    嵐の前みたいな静寂が一呼吸ほどよぎり、息を詰めて身構える。
    その足元が、がくんと揺れた。
    膝をつく間もなく、ぎしぎしと校庭がひび割れていく。


    「わっ! え、なに!? 地震!?」
    「ちげえ! ツナ飛べ! 蔦だ!!」

    リボーンが叫んで綱吉を蹴っ飛ばしたのと、みしみしと地を割り、校庭のあちこちから緑の柱が現れたのはほとんど同時だった。
    蔦の束は器用に白蘭を避け、触れるものに撒きつこうと蛇の如くのたうっている。


    「いくら正チャンのおねだりだからって、実績がなきゃあ基地まるごと正チャンの炎仕様に作ってあげるわけないじゃない。
    ちゃんと対効果が確信できてたからこその、あのメローネ基地だったんだよ。
    あ、咲きだした。綺麗でしょー」


    校舎にとりついた蔦や、地面から突き出した柱の各所で赤い薔薇が咲く。
    場違いに甘い香りが漂った。
    足元では獄寺が爆弾を駆使しながら緑を避けているけれど、手数が違う。
    助けに入らなくては。
    視界の端に映る校舎の屋上。
    出入り口の上。給水塔の前。小さく座る正一の隣の小さな匣から、うねるように蔦が這っては伸びていく。
    コンクリートをひび割れさせながら、縦横無尽に広がる蔦は彼の頭上にも伸び、見る間に正一を囲う鳥籠のようなドームを作った。


    「防戦特化の能力では、あるんだけどね、僕みたいなアタッカーがいれば話は別。
    明確に役割を分担できる。
    サポート枠なのに防御極振りだから、ちょっと放っておいてもそうそうやられない。
    あの蔦のケージ、うまく壊さないと、近づけば捕まるよ。
    こんなこともあろうかと正チャン専用にカスタムした指輪をあげたから、偽物マーレより炎効率も段違いのはず。
    匣は本人が君たちも含めた有事のときのためにってせっせこ作ってたのを持ってきてくれてね、うん。
    ほんと僕の親友ってば味方になると頼りになりすぎー♪」


    頬にすり寄る白龍を撫でて、白蘭が親友自慢を続ける。


    「ホワイトスペル──ジェッソの古参はあの薔薇の要塞を見て、畏れ交じりにRegina delle rose(薔薇の女王)って崇めたものさ。
    ローザ隊の由来だね。
    本人はその呼び方嫌ってて、次第に研究びたりの後詰めになっちゃったから、知ってる人はすごく少ないんだけど。
    数で負ける戦闘時には、よくお世話になったものだよ。
    捕まえちゃえば、数なんて関係なく各個潰せるもん。
    未来の綱吉クンや雲雀クンが把握してたかまでは、知んないけど。
    ちなみに、この胸の薔薇はね、また別の匣から咲いてる花なんだよ。チャージ型♪
    花が枯れるまでは、正チャンの活性の恩恵を受けて闘える」
    「花が、枯れるまで……」
    「そ。だからね、それまでに、君ら倒して戻らなきゃ。
    さっき約束してきたから、破ったら正チャンに怒られちゃう」


    慈しむように、花びらを撫でる指。
    そんな顔。
    そんな普通に優しい顔、できるくせに。
    その手は助けることだってできるはずのくせに。
    なんだってそんなに、破滅と隣り合わせの道ばかり通ろうとするのか。

    “今度は隣にいて、一緒に”

    正一がどんな気持ちであの言葉を言ったのか、わかるなんて言えない。
    そんなのはおこがましいから、想像するだけだ。
    そしてそれを、綱吉は綱吉の理由にしないことを決める。
    これは正一の言葉に沿うためではない。
    もちろん、白蘭のためでもない。
    自分が今、グローブに、額に、更なる炎を纏うのは。
    白蘭を、白蘭の望む世界征服を再び止めたいと願う、自分のために他ならない。

    怒りのありかは、今度こそ綱吉のものだ。


    「正一は言ってた。一緒に倒されてやろうって」
    「……そーだね」
    「オレは、オレのために二人を倒す」


    やってみてよ。
    数拍置いて言い捨てて、ニィィと、好戦的に白蘭が笑む。



    よく晴れた、青い空の日のことだった。





    ◆おまけ:屋上での会話


    「これ、この指輪、僕のでいいんですよね!?
    大体姑息で卑怯なんだよ! 急に窓からやってきて、マシュマロ食い散らかしだして『あ、約束した時間きたからじゃあね~』とか言って出てったかと思えばなんか小箱置いていくし!
    封も鍵もないもんだから好奇心に負けてちょっと覗いたら、晴の指輪だし!
    つけてみたらサイズぴったりだしやたら炎の出がいいし!
    箱からは急に通信入って鼻歌聞こえだすしこっちの声は届かないし!
    “見なかったことにして指輪ごと全部壊そう”って思った直後に物騒なこと言いだして!
    近くにツナ君がいて並中でやらかしてますってことがありありとわかる口上述べやがって!!
    思惑通りなんでしょうねちくしょう!!
    あーもう! お腹いたくなる暇もないよばか! 白蘭サンのばかばかばーか!!!」

    「丁寧な説明ありがとー!
    やー、負けてくれると思ったけど、正チャン好奇心に勝てないよねー♪
    絶対開いてくれて、ためしに指輪嵌めてくれると思ってたんだぁ。
    でもそれ、中指より薬指のほうがサイズ合ってるはずだからあとで嵌めなおしてあげる。
    音声は、だって、知らない間に僕が倒すか倒されちゃったら悲しいだろうなって、野球実況ラジオのかわりみたいにしてくれればという嘘偽りない心からの親切のつもりだったんだけど。
    綱吉クンと一緒に僕を説得しにくるとばかり思ってたのに、まさか味方になってくれるとかびっくり!
    人生で一番びっくりしたかも。
    生きててよかったー!!」

    「忌々しい! 悔しい! ほんとさっさと倒されてください諸悪の根源!」

    「あはは、でも手加減したら怒るでしょ?」

    「当たり前なことを確かめないでください」

    「じゃ、ほら。強化かけて♪ かけて♪ 懐かしーね、ジェッソの駆け出しのころみたい。
    衛生班にいたいかにも事務研究員みたいな正チャンがさ、撤退戦とか殿任されて薔薇の匣で実際うまくやってのけてさ、馬鹿にしてたC級戦闘員がこぞって謝りにきたりして。
    ふふ、あれは実に爽快な手のひら返しだった」

    「そういう人を、無下にはしませんでしたが? 恐怖からの保身とはいえ、礼節を実行できる人を僕は嫌わない。
    ────ん、どうです」

    「ありがと。調子いいよ、慣れたもんだよね。ね、あの時みたいな匣、あるの?」

    「一応準備はしてました。初めて使うのが、こんな場面とは思いもしなかったけど。
    もっとちゃんとこう、ツナ君やユニさんの役に立つようないい場面でお披露目したかったのに……はあ、全部台無し。全部白蘭サンのせいだ」

    「ねー、そこらへん投げすてて、僕の味方になってくれたんだもんねー」

    「ひっつくなうっとうしい」

    「敬語ないほうが大学時代っぽくてすきー♪」

    「あ、あとこれ。どうぞ」

    「なにこれ? 匣?
    急に薔薇生えたけど。前のみたいににょきにょきしないで、一輪だけなんだね?」

    「こっちはチャージ型です。
    僕の炎で咲かせたこの花が溜められる限界まで、晴れの炎を詰めました。その胸ポケットにでも入れておけば、枯れるまでは自動で活性効果が働いて、バフ継続させつつダメージ回復するんで。
    どのくらいもつかはどのくらい攻撃を放って受けたかで変わるから、適当に察しながら闘ってください。
    散らされちゃっても効果はなくなるんで気を付けるように。
    僕の手元じゃないと、咲かせなおしはできませんので」

    「すご……チートじゃん。
    綱吉クンに倒されるって信じてるくせに、本当になんにでも全力かつ手を抜かないよね」

    「でなきゃ失礼だし、あなたは諦めないんでしょうに!
    …………、これは前から理論を研究してた匣で、未来じゃ間に合わなかったけど、今はヴェルデ先生もいるしやっと先週試運転も済んで、完成したばっかりの出来たてなんです。
    マーカーにもなってるから、それを付けてれば僕の茨はあなただけは襲わない。
    茨が周りの木々にとりついてうまく炎を流せれば、そこら辺の植物も僕の支配下におけるかもしれません。
    希望的観測ですがね」

    「さっすがえぐい♪」

    「どうも」

    「じゃ、正チャンのこの薔薇、散らされるか枯れるかしたら戻ってくるね」

    「…………さよーで」

    「え、なんで? 眼がつめたいよ入江様」

    「いえ、僕の花をダメにする前提で赴くとか、見下げ果てた気概だなあって感心しただけです。
    白蘭サンのやる気とはそんなものでしたか。
    いいですよそれでも今の僕は味方です。
    どーぞどうぞ、散らすか枯らすかしてきてください」

    「…………」

    「…………」

    「…………」

    「…………」

    「……ごもっともー」


    思い出より小さく細い、中学生の手を拾い上げて騎士のように膝をつく。
    頭を垂れ、指先へ口づけをひとつ。


    「花の美しいまま、蹴散らして戻ってきます。Mio caro────どう? これで手打ちにしてくれる?」

    「喧嘩してたわけじゃない」

    「ん、そーだね」

    「握らないでください」

    「照れてる?」

    「……下に、綱吉君たち、いるのに」

    「ふふ、じゃあこれだけ」


    「──────」
    「──────」


    「うん、満足した。行ってくる」

    「ええ。あとはお気に召すまま存分に」


    白蘭の薔薇が、にこりともせず頷いた。



    * * * * *


    mio caro=マイディア的な(Google調べ)

    血統書付きのプライド高そうな猫みたいな入江様を見たいし、それに嬉々として振り回されに行くでろでろな白蘭さんも見たい。という気持ちがつまっています。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works