ミラーリング #10(影の国編:後編)猛犬の息子
轟く怒声。馬のいななき。赤く染まる川。
バシャバシャと水しぶきを上げながら浅瀬を渡る。枯れた森を抜けたところで、空に向かって激しく燃え上がる火柱が目に飛び込んでくる。城だ。城が燃えている!
──助けて!
誰かの叫び声が聞こえ、その方向へ向かって走る。
──助けて、誰か!
バチバチと音を立てて炎上する城壁を見上げれば、誰かが自分に向かって手を差し出している。
──お願い、誰か。誰か、助けて!
「……きろ、クー! 起きろ!」
強く揺さぶられ、目を開けた。オイフェが心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
「ひどくうなされていたぞ。大丈夫か?」
「あ、ああ……」
いまだ動悸はおさまらない。嫌な夢を見ていた気がする。呆然としながら汗をぬぐったところで、クー・フーリンは慌てて起き上がった。
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