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    れんこん

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    れんこん

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    ビリーが居なくなってしまった話。
    未来ごりごり捏造しています。

    #ベスティ
    besty

    すっかり慣れ親しんでしまったタワー。
    最早実家よりも馴染んでしまうくらいになったそこでの生活。
    パトロールが終わって、後は眠るだけの時間。
    ……今日は夜から出掛けるのはやめよう。

    昔程は毎日のように夜遊びという無茶はしない。
    まぁ頻度がほんの少し減っただけ。特に大きくも変わらない。相変わらず女の子からの連絡は沢山くるしね、むしろ昔よりさらに増えたくらい。
    理由と言えば、少しだけ明日のヒーロー活動のために睡眠を取らなきゃいけないかな、なんて思った時だけ眠るようにしている。
    今日の理由はほんのちょっと、違うけれど。


    最早見慣れてしまった街でパトロールをしていた。
    ただいつもと変わらないその日常で、今日は背景のひとつだったキャンディショップが目に入った。綺麗にまるで花束みたいにラッピングされたロリポップが明るいオレンジ色のリボンで纏められて。恐らく誰かへのプレゼント用か、ただのディスプレイなのか。わからないけど。
    あの時渡したそれにすごく似ていたな、なんて思ったらぽっかり空いていた穴みたいなものに久しぶりに引き摺り込まれてしまったような感覚に陥った。ずっと、その気持ちにわざと知らぬフリをしてきたというのに。
    ……出掛けなくともきっと眠れない。
    それが分かっていても、誤魔化しに人と会う気分にはなれなかった。
    今俺が会いたいのはただ1人その子だけだから。





    あれからあまり訪れなくなってしまった談話室。
    こうして、どうしても縋りたくなる時にだけ来てしまう。幻みたいに感じてしまうあの時を、鮮明に思い出せるから。
    大体どっちかがここに居て、後から来た方が隣に座る。椅子や席は沢山あるけれど、ここのローテーブルとソファがお気に入り。
    観葉植物の影に若干入るのも好きな要素だったーー……今はもうその植物も長さを整えられて、配置も変えられてしまったけれど。
    沢山沢山、くだらない話をして、そのまま遊びに行くことはレア。殆どがじゃあね、とさらりと別れてそれぞれのセクターの元へ。
    それはアカデミーの頃から変わらない。
    ただ心地よい程度の距離感で、ただお喋りをして。用が済んだらじゃあね。

    ……用が済んだからいなくなってしまったんだろうか。


    明るくどこに居ても目立ちやすい髪色は自分とは正反対。いつだって表情は完全には見せてくれなかったけれど、それで良いと思っていたし、それでこその居心地のいい距離感なのかもしれないと感じていた。
    軽口を叩くようなやり取りの中、お金を払ってその隠された中の瞳を見た。完全にふざけたノリでの出来事だったけれど。
    あの子は他の人の前では全くそれを晒す素振りは見せなかったから、俺だけに許された特権みたいに感じてほんの少しだけいい気になっていたのを覚えている。
    本当は殆ど……全くと言っていいほど、彼の持つ秘密の一欠片すら知らないのに。

    ソファに腰掛けて、隣を見つめてもそこはぽっかり空いていて、自分の心の中の風景そのままだ。
    ……いつもじゃない、普段は忘れたようにして、最初からそんなの居なかったよってフリをして毎日を過ごしているのに。
    あの日から時間が経てば経つほど、昔の記憶が遠くなればなるほどに、この穴みたいなものは大きくなって。
    「いなくなった」という事を突きつけられたその時よりも今の方が沁みていく。
    あの時にもっとなんで、どうして、とかいって喚いておくべきだったのかな、彼のかつての同室相手のように。



    ……ビリーは、…俺のベスティは、……いなくなっちゃったんだよ。

    またくだらない話がしたいとこの寂しがりの唇がそう告げて、叶わないから諦めろと、きゅ、とそれを噛む。

    居なくなってしまった事について、理由はわかるようで、わからない。当時、イクリプスとの抗争中に発覚したのはビリーがエリオスの情報をイクリプス側に流していた事と……同時にエリオス側からはイクリプスの情報を調べる任務を負って、それを遂行していた事。……つまりはダブルスパイような真似事で、でもそれは報酬を貰えばなんでもやるというビリーの情報屋のスタイル上……まぁ道理としてはどういうことなんだと思っても、当たり前の事のようなもので。
    昔からのビリーを知っているなら、その行動も突拍子もない事とは切り捨てられない。ビリーはとりあえずお金が手に入るならばなんだってした。
    ……そして、メンターリーダーから聞いた。
    ビリーがイクリプス側に流していた情報は、後から引いた視点で見るとエリオス側からの誘導に使えるような単純なものが多く、おそらく渡す内容をかなり選んだ上で向こうにある程度の距離感を持って取り入るようにしていたんだろうと。
    ビリーは馬鹿じゃ無いから、ただ平等にスパイをしてました、というようなモノでもない。
    ここで単純に裏切り者だという判断をするのは早計だと。

    だから、いざビリーがしていた事実が発覚したとしても、彼がタワーを去る必要は無かった。
    ……と、メンターリーダーの兄は語っていた。
    事実が発覚した所で、俺には細かくて難しい話はわからないし、ただビリーがそうだとしても俺とビリーの間の関係が突然変わることもないし……なんて思うだけだったけれど。
    ある日の朝、いつも通りなんとなく夜遊びをして
    セクターのリビングに帰ってきた所で、いつもはだらしのない顔でぼさっとしているメンターが酷く焦ったような顔をして俺に声をかけてきた。

    『お前、ビリーが……。』

    え、とただ反射的にでた言葉が、朝の静まり返った部屋に響いた。
    深夜のうちにビリー・ワイズがタワーから消えた、と。
    同室のグレイも気付かないうちに、身の回りの簡単なものだけを持って居なくなってしまったと。
    エリオスの制服も、普段の服なんかも置きっぱなしで……そして、ヒーローのライセンスも、そのよく拭き上げられていた自室のテーブルに残されていた。

    ……そのビリーの痕跡を調べていた中で出てきた事実は、研究室の薬品がほんの少し減っていた事。
    使い捨ての注射針の袋が捨てられていた事。
    ビリーはご丁寧に自ら、サブスタンスの能力を抹消してから出て行ったらしい。

    理由はわからない。
    全てがわからない。

    ビリーがスパイのような真似事をしていたと聞いて勿論ディノの時のように、断罪すべきだという者もいたけれど。でもそれはほんのひと握りで……何よりそのディノを受け入れている組織だ。誰も、ビリーに直接出て行けなんて言ってなかったのに。

    誰にも言わず、直属のメンターにも同室相手にも……そして『ベスティ』の俺にも言わないで勝手にいなくなった。
    すぅっと蒸発でもしてしまったかのようにその足取りは全く掴めなくて。
    街でマジック等を披露するのは日常茶飯事だったけれど、それも全く見られなくなって、頻繁に更新していたSNSも止まったままで。
    関わっていたアルバイト先のダイナーの店長や、情報屋として接触した事があるという顧客に尋ねても、今どこにいるかはわからないし、出会ってないという。

    一体何処へ消えてしまったのか。


    彼がいなくなってから直ぐは……、所属していたイーストセクターがパトロールがてらにビリーの捜索をしていた。
    同室であったグレイは特に熱心で……、任務中に突然いなくなったでもなく、退職の意思が見られて自分から出て行ったのだし……もう、捜索は一旦打ち切ろうと上から言われても……そのビリーの痕跡の残る部屋を片付けることも出来ずにずっと独自に足取りを調べていた。
    でも、成果はなし。

    あれから数年経って。
    第14期のルーキーが入ってくる年になって、当時の研修チームも解体された。
    一応なんだかんだ俺もめでたくひとつだけ階級が上がって、AAのヒーローになって。
    制服も黒からグレーのそれに変わり、似合わないながらにメンターとして……またウエストに配属された。
    もちろん変わったのは俺だけじゃ無くて、ビリーのいたイーストセクターもそうで。
    その折にビリーの遺したものは全て別の人の手で片付けられ……今や本当にそこに居たのかわからないような扱いになっている。
    忘れてしまったように……いや、やはり俺と一緒でわざと忘れているフリをしているだけなのか。

    ……俺はさほどビリーを捜索しには行かなかった。
    そもそも、そんな凡人が思いつくような捜索で、あの徹底したビリーが見つかるわけがない。
    だから、そもそも探そうなんてそんな意思すら持ち合わせてはいないのに。
    でもどういうわけか、馴染みのイエローウエストでふと気付いたら彼と話しながら歩いた裏路地を覗き見てみたり……今日のようにキャンディショップを見つけたらその明るい髪の毛が店内でぴょんぴょんと跳ねていたりしないか、なんて伺ってしまう。すべて、無意識に。

    ……なんかやだな。


    取り巻くものが年月で変わったとしても俺自身は何も変わっているつもりがないのに。
    ヒーローへの姿勢も程々に。同室のおチビちゃんは相変わらず口煩くも昔から変わらないその愚直なほどの真っ直ぐなままだし、キースはディノが来てほんの少し自暴自棄が抑えられたけど、自堕落な所は変わらない。ただ、ビリーが居なくなってからというもの、度々大丈夫かと双方から声をかけられていた。勿論元々他人の機敏に敏感だというディノからも。
    意図は分かりつつも、触れられたくなくて、その度に何が?と誤魔化して。
    ……そして、あぁ、俺はビリーに触れられたくないんだ、と後から気付く。
    自分の中で少しずつ風化していくのが嫌で、こうして記憶を思い起こす作業を人知れず繰り返してしまうくらいには。

    イーストからの捜索の要請も、昔の思い出語りのようにジェイからかけられる言葉も、グレイのその必死な顔も……全部避けてきた。
    それは、今思えば勝手に俺の側のビリーを、他の人達の思い出のビリーと一緒にしないでよ、過去にしないでよ、なんていう馬鹿みたいな変な意地みたいなものだったのかもしれない。
    俺はキースとは違う。真相を突き止め、探しに行こうというそんな一途に思い込める強さも持ち合わせていないんだ。
    独占欲なんて、唯一のものなんて、特に持ち合わせたつもりはなかったのに、ビリーが勝手に名付けていった関係性のそれに今更縛られて。
    その言葉に安心していたんだと今更気づく。
    ……好きとかそういう情緒溢れるようなものでもない、ただ隣に居ても当たり前だし、居なくてもなんとなく気にかけてもらえるし、それ故の踏み込まない距離感、そんな特別な唯一のものに縋っていた。それがぱしゃんと水風船が弾けるみたいに簡単に終わってしまった。
    ……アハ、これじゃまるで俺は勝手に失恋でもしたみたい。

    誰よりも軽快なフリをしておいて、恋人よりもなによりも重いじゃん、なんて軽く乾いた笑いが出てくる。重いのは面倒だから嫌いなのに。
    そんな、事柄よりも何よりも面倒で重くなっているのは自分自身だって気付いてるのに。

    他の人達が月日に順応し、ビリーがいない生活を当たり前とすればするほど逆に俺の中の穴が広がっていくばかり。もう数年。いい加減俺も慣れるべきなのに。
    こうしてまた何もできないまま、ただソファを軽く撫でて眠れない夜を過ごすだけ。
    明日になったら他の人と同じように何も知らない顔をして過ごすんだろう。……ただ、穴が広がっているから、落ちる頻度が増えてしまっているだけで。

    ビリーがここに居たなら。
    居てくれたならば。
    ただ眠れない夜だって、別々の事をしながら、お互いがいるという事実だけで、それだけで一晩過ごせた。
    でもやっぱりキミとはまだまだ話しても話し足りないみたい。
    誰もいない談話室のソファに寝転がって。
    どこで生きて元気にしているかもわからない『親友』との夢を見る。
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    れんこん

    DONE第13回ベスティワンドロ用
    お題「祈り」「未来」
    未来捏造のベスティ(notカプ)のお話。
     まるで絵の具をこぼしたみたいな真っ青に塗り込められた雲ひとつない空に、正反対のオレンジ色が映える。
     そこそこ強い風にその髪の毛が煽られて、太陽の光を受けてきらりきらりと光った。


    「……いいの?」

     その相変わらず若干細っこい背中に声をかける。
     すると、その肩が少しだけぴくりと動いて、でもこちらを振り返らずに、ただ青い空を見つめたままだった。

    「いいの。」

     ふ、と一息ついたかと思うと、ビリーの手からぽんぽんといつもみたいに花が溢れ出る。赤、青、黄、白、紫、橙……色とりどりの花には共通点もなんにもなくて、ただ持っていた全ての花をそのまますべて出したというのが正しいのかもしれない。
     その花は強い風に吹かれて花弁になって散っていく。その様は、きれいで、そして寂しい。

     彼と出会って何年経ったろう。
    アカデミーの頃まで含めると、多分最早腐れ縁だねと言えてしまうくらいの年月。
     それなのに噂だけでしか知らなかった彼の父親の葬儀に呼ばれたのは少し意外だった。
     元々重病だったのに、余命宣告よりもずっとずっと長生きしてくれたんだヨ、とぽつりぽつりと聞いたことないトーンでビリーが喋 3822

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

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    昔程は毎日のように夜遊びという無茶はしない。
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    理由と言えば、少しだけ明日のヒーロー活動のために睡眠を取らなきゃいけないかな、なんて思った時だけ眠るようにしている。
    今日の理由はほんのちょっと、違うけれど。


    最早見慣れてしまった街でパトロールをしていた。
    ただいつもと変わらないその日常で、今日は背景のひとつだったキャンディショップが目に入った。綺麗にまるで花束みたいにラッピングされたロリポップが明るいオレンジ色のリボンで纏められて。恐らく誰かへのプレゼント用か、ただのディスプレイなのか。わからないけど。
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    れんこん

    DONE第16回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「部屋」
    グレイから見たベスティのお話
    ※ビリー出てきません
     ちいさく、キラキラ光るガラス瓶。
    複雑な形にカットされたそれは、ハートの形状を形作っていて、その表面は光が反射しやすくなるようにさらに細工が入っている。
    蓋は黒くシンプルで、根本には濃いピンク色のリボンが巻かれていた。
     中に入っている液体は何色なんだろう。ガラス瓶の色なのか中身の色なのか、隣のスペースからは判別できない。

     わりとナチュラルなテイストで纏められたビリーくんの部屋には少しだけ不釣り合いに思えるような……というか、まるで女の子の持ち物のようなそれが、つい目に入ってくる。
     きっちりと本が並べられたデスクの上にちょん、と置いてあるそれの隣にはなにか小さな音楽プレーヤーみたいなもの。これも、濃いピンク色。ハッキリと存在を主張するそれになんだか動揺して、見なければいいのに目がチラチラとデスクの方に向く。……ううん、友達って……、難しい。


    「ビリー、いる?」
    「ヒィッ!?」
    「……っ!?」

     突然ぱしゅんと音がして部屋の扉が開いて、突然の訪問者にびくっと背中を震わせてしまった。
     なんとなく気になって仕事で留守にしているビリーくんの部屋を勝手に覗いていたから、そのやまし 4368

    れんこん

    DONEアカデミー時代ベスティ
    出会い捏造のお話です。
    『こんなことも出来ないのか?お兄さんのブラッドはー…』

    『フェイスくん、カッコいい、全部好き!』

    『…ー兄弟なら、お前も優秀なはずじゃねーの?』

    『ねぇ、私と付き合ってよ、』



    頭の中に交互に響くのは自分への否定と肯定の言葉。いろんなものがごちゃ混ぜになった地面のない世界のど真ん中に放り出されたみたいな心地がして、びくりと体を震わせて目が覚める。
    ……うたた寝ってろくな夢を見ない。
    なんとなく蒸し暑くなってきたから、校舎の隅の木陰で横になっていたけれど、失敗した。
    陰で水分を含んだ芝が制服を湿っぽくして、まるで今の俺の状態を仲間と認めて誘ってくるような。……やだな。
    でもそれでもサボっていた授業に戻ろうなんて気も起きなくて。かといって自分と違ってやる気のあるヒーロー志望の子と同室の寮に戻る気だって起きない。
    好きと嫌いの感情のマーブルチョコは今は受け付けられなくて、女の子に会って気晴らしをしようという気にもならない。
    この無駄にただイライラと……いや、しゅんと落ち込んでいくような気持ちを抱いている時間が無駄だというのはわかっている。

    ……こういう時には音楽を聴くのが良い。
    4895

    れんこん

    DONE第7回ベスティワンドロ用
    バレンタインイベ、カドスト等を踏まえたお話。
    not カプ
    ハッピーバースデー&バレンタイン

     ここ数日で山のように贈られたその言葉と気持ちに、珍しくちょっと流されてうわついて。

    「……。」

     なんとなく目が覚めてふわふわと浮くような腹のあたりを触る。
    むず痒いような、でも嫌じゃない感覚に、なんとなく高揚させられているのも混じっている。
     ……いろんなことがあったから、かな。

     まだ、日付の変わる手前の時間。
    LOMからの外出続き、祝われ倒しのパーティ続きでさすがに疲れ果てて、帰り着いた途端眠っていたらしい。同室のおチビちゃんはもうおねむの時間だから、隣からすやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

     ……いつもガミガミと口うるさいのは変わらないのに、なんだかんだパーティでは生演奏を披露してくれた。パーティのための準備もみんなで考え尽くしたらしい。その時のことを思い出すとまた胃のあたりがふわりとして、ふふ、と口元につい笑みが浮かぶ。……こんな感覚は初めてかも。らしくないけど、たまにはいいよね。
     自分が上機嫌なのを客観的に感じて面白くなっていく。

     ……でも、なんとなく何か変な感じがする。
    ふわふわの中にお腹が空いたような変な感 5277

    れんこん

    DONE第14回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「契約」
    フェイビリ風味です
    こ難しく短い眉を寄せたり、緩く特徴的なカーブを描く唇に当てられた手袋越しの指がトントンとそこを叩いて、何かに悩むような考えてるような素振り。スマホを何度かスクロールして、なにかを見つけたのか、寄せられていた眉が緩んで、口角も緩んだ。
    同じような光景は今まで視界の隅で何度も見てきたような気がするけれど、改めてその様子をまじまじと見つめると、なるほど、ゴーグルをして謎めいてわからない印象を抱いていたけれど、案外その表情も、醸し出す空気すら、わりと豊か。

    「ふ〜……、って、なぁにDJ〜〜!?こないだからオイラの顔見過ぎじゃな〜い?……さては〜、今更俺っちに惚れちゃった!?」
    「まさか。……アハ、もしそうだったらどうするの。」
    「エ〜!?絶世のイケメンに言われちゃ考えちゃうナ〜♡」
    「はいはいっと。せめてゴーグル外してから言ったら?」
    「ンッフッフ、ゴーグルの下はベスティ♡にはトクベツ価格でご案内シマース♡」
    「……アハ。」

    ビリーは、変わった。
    今見ていたのもただただ金を巻き上げるためだけの情報でなく、誰かを喜ばせる為の下調べ。おおよそ……、前話していたジェイの子供のことだろうか。謎の胡 3408

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